ゆく年くる年

さてそんな昔の話などもしながら和気あいあいと料理を続ける魔鈴達だが、仕込みが終わった食材は発泡スチロールに入れたりして運んでも大丈夫なようにしていく

孤児院では出来ない仕込みや時間がかかるクリスマスケーキは店で作るが、孤児院でも出来る工程は向こうでする予定なのだ

そのまま借りて来た車に大量の仕込んだ食材やクリスマスケーキを積んで運ぶのだが、運転手は免許取得以来初めて運転する横島だった

元々都内では車を運転する機会などなく、移動は電車やバスに魔法のほうきと車が必要になったことは今回が始めてなのである


「……大丈夫ですか?」

免許取得以来初めて運転する横島に魔鈴やタマモは不安そうだった

シロは意味もなく横島なら大丈夫だと信じてるらしいが、明らかに横島はペーパードライバーなのだから


「任せて下さいよ!」

不安げな二人に対して何故か自信ありげな横島だが、もちろん自信に理由などない

免許取得以来一度も運転してないが横島は運転してみたかったようだ


(本人がやる気なのに雪之丞さんに頼む訳にもいきませんしね)

実は雪之丞も車の免許を所持しており魔鈴は慣れてない横島より雪之丞に頼んだ方がいいかと少し悩んだのだが、やる気がある横島を前に言えなかったらしい

そんな雪之丞は十八になってすぐに免許を取得して、除霊絡みの仕事などで何度も乗った経験があるようなのだ

あまり昔の話をしないので魔鈴や横島もよく知らないが、やはり危ないこともかなり経験したようである


「これでも昔F1のマシンに乗ったことあるんっすよ。 人工幽霊のサポート付きでしたけど……」

「素人にF1の運転って、また無茶なことを……」

そんな訳でペーパードライバー横島の運転で出発した車は、予想よりは静かなままトラブルもなく進んでいく

流石に安全運転をしてる横島だったが、ポロッと以前の除霊でF1のマシンに乗った話を始めると魔鈴はやはり呆れたように頭を抱えてしまう


「確かに亡くなった方の思い残したことを解決するのは除霊方法として素晴らしいですが、何故素人にそれをさせるのか理解出来ませんね」

横島としては過去の話として何気なく語っただけなのだが、相変わらずの非常識っぷりに魔鈴が頭痛を感じたのは仕方ないことだった

一歩間違えれば死ぬようなことを平然とさせる令子も、それをやってしまう横島も魔鈴は信じられない

横島が囮に使われたりと非人道的なやり方を令子がしていたのは十分理解してる魔鈴だが、改めて個別な話として聞くと過去のこととはいえ一言言わずには居られなかったようだ


「美神さんですから」

そんな呆れを通り越したような魔鈴に横島は令子だからと冷めた一言で済ませるが、魔鈴は横島の側にも問題があったのだとシミジミ感じる

令子の非常識は今更考える必要はないが、かつての横島がそれを信じ受け入れていたことも問題なのだ

特にアシュタロス戦以前の横島は本当の意味での除霊の危険や命の大切さを理解してなかった可能性が高い

魔鈴は改めて横島がGSを辞めた件は結果的に正しかったのだと実感していた



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