ゆく年くる年

その後映画館を出た横島達は今回もそのまま外食に向かうが、初めての映画だった小竜姫達には映画館も映画の内容も好評だったようだ

夏の旅行でもそうだったが、娯楽に関しては神魔界より人間界の方が発展してるのかもしれない


さてそんなこの日の外食はなんと回転寿司で、リクエストしたのはパピリオだった

以前からパピリオがテレビで見た回転寿司に行きたいと騒いでいたからなのだが、小竜姫達は基本的にどこでもいいらしく結局回転寿司に行くことになったのである

まあ回転寿司にも美味しい店や値段で勝負の店までピンからキリまであり、その辺りの店選びは魔鈴に任されたので魔鈴は当然美味しい店を選んでいたが……


「それにしても、まさかお前らがモデルだったとはな~ 確かに似てる感じだとは思ったけどさ」

回転寿司に入った一同はさっそく寿司を食べ始めて、回転寿司も初体験の小竜姫やパピリオはいろいろと物珍しそうに見ていた

そんな中、横島は映画にタマモとシロがモデルの二人が出て来たことに素直に驚いている

なんとなく似てる感じはあったが、流石に二人がモデルだとは思いもしなかったのだ


「銀一さんなりのメッセージなのかも知れませんね。 妖怪は決して敵ではないという。 テレビ版は割と妖怪と戦うことが多かったですし……」

元々テレビ版の踊るGSはさほどリアリティを追求したドラマではなく、一般人のイメージするような分かりやすいGSが活躍するドラマだった

基本的に登場する悪霊や妖怪は悪として演出されることが多く、ある意味退治されて当然のように演出されてる

今回の映画で銀一がどこまで演出やストーリーに絡んだのかは魔鈴や横島には分からないが、ヒロインの正体が妖怪だった点は銀一が関わったのだろうと見ていた

正直ストーリーの流れにさほど妖怪は絡んでないし、ヒロインが必ずしも妖怪であった必要性はないのだ

一応主人公が過去に助けた善良な妖怪であり、主人公の仲間達と共に危機に駆け付けたというある意味恩返し的な要素はさほど違和感がないが、よくよく考えると後付けの設定にも見えなくもない

元々テレビ版とは違った内容の映画に、銀一の意見を盛り込んだのではと魔鈴は推測していた


「私はよかったと思うわよ。 正直に人間と妖怪の関係をそのままリアルなドラマにすると楽しくなくなるもの」

「確かにそうね。 そもそも妖怪は過剰な注目を集めることを望まないわ。 そういう意味では演出のサプライズで済まされるアレは私もよかったと思うわ」

横島や魔鈴の言葉に妖怪の側の愛子とタマモも感想を口にするが、二人も割と好意的に受け止めている

扱い的にさほど大きくなく昔話の恩返しのように分かりやすい妖怪の存在は、一般の人々に馴染み深くあまり違和感がない

ある意味それとなく好感が持てる存在として妖怪を登場させたさりげなさは、妖怪の立場からすると非常にありがたいようだった

愛子もタマモもそして多くの妖怪達も急激な変革など望んでない

銀一が何を考えていたのかは分からないが、少なくとも自分の影響力を理解してやり過ぎないように心掛けたバランス感覚は愛子やタマモ達にも伝わったようである



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