ゆく年くる年

十二月もいよいよ後半に差し掛かると銀一主演の踊るGSの映画がいよいよ公開されていた

ドラマ版の人気を引き継ぎ前評判がよかったおかげか、映画は公開早々に大ヒットしており銀一は連日全国の映画館に舞台挨拶をしてるらしい


「私も映画は初めてなんですよ」

そんなこの日横島は銀一に貰った招待券で踊るGSを見に映画館に来ていたが、横島達四人に雪之丞・小鳩・愛子の三人と小竜姫・ヒャクメ・斉天大聖・パピリオの妙神山のメンバーが揃っている

実は銀一は夏の旅行に行ったメンバー全員分の招待券を横島に持って来たのだ

流石に天龍童子は来れなかったが、魔界のワルキューレ達にも小竜姫を経由して招待券を送っていた

ちなみに斉天大聖老師もちゃっかり来ているが、基本的に一緒に誘わないと後々根に持つらしい

横島達の卒業パーティーに誘わなかった後、小竜姫が大変だったと魔鈴にこぼしていたとかいないとか……


「テレビと違い迫力があって楽しいですよ」

基本的にみんな楽しみにはしているが愛子と小竜姫とパピリオが特に楽しみにしてるらしく、特に映画館が初めての小竜姫達は興味津々な様子であちこちをキョロキョロと見回している

時間はスケジュールの都合上すでに二十一時を過ぎた夜に見に来たのだが、館内は九割方埋まっており映画の盛況ぶりを伺える状況だ



そのままポップコーンと飲み物を手にいよいよ映画は始まるが、最初にテレビ版のおさらいがされておりテレビ版を知らない者でも楽しめるようになってるらしい

ちなみにテレビ版を知らないのは横島・シロ・雪之丞・パピリオの四名だったりする

愛子もちろん小竜姫や斉天大聖まで見てたらしく、妙神山は暇なんだなと横島や雪之丞は密かに感じていた

そんな訳で映画は始まるのだが、その内容に横島達は驚くことになる

基本的に踊るGSは銀一演じる主人公が悪霊や妖怪なんかと戦うのが定番なのだが、今回主人公は何者かの罠にはまり指名手配されてしまうのだ

訳が分からぬまま警察に追われ逃げる主人公を助けたのが、映画版のヒロインの二人組だった

主人公は彼女達に助けられながら逃亡し事件の捜査をして真犯人を探すという、今までとまるで違うミステリーのようなストーリーである

さて紆余曲折を経て主人公は真犯人にたどり着くが、真犯人はGS業界の重鎮であった

背景にあったのは巨大なオカルト利権であり主人公はそれに巻き込まれたのだったが、映画の最後の最後で明かされたヒロインの二人の正体はかつて主人公が助けた妖狐と人狼だったという内容である

主人公の危機を察知して助けに来たということで終わっていた


「これって……」

映画が終わり館内が明るくなると、愛子達や小竜姫達の視線が横島とタマモとシロに集まっている

ストーリーは違うがどう考えても主人公とヒロインの二人の関係は横島とタマモ達の関係そのものだったのだから

それはかつて銀一が令子の除霊を見学に行った際に見た横島達の関係そのものだった

そしてこの映画はGSを演じて来た銀一が、横島達に関わってから知った妖怪や魔族は決して敵ではないとの秘められた想いを形にしたモノである

それは決して素人の銀一が軽々しく口にしていいことではないが、この映画を通じて一人でも多くの人が真実にたどり着いて欲しいとの願いが込められてることを横島達は知らなかった



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