ゆく年くる年

その後は会話もないまま交代で休みながら静かに霊障が現れるのを待つ三人だったが、残念ながらこの日は何事もなく朝を迎えてしまう

事前の情報ではポルターガイストは夜に起こるとの情報だったが、必ず夜に起こる訳ではなく何度かそんな情報があるだけなのだ

実はこの手の調査の仕事は、こういった形で一日だけでは終了しない件も稀にだが存在する

特に霊障の調査は難易度が低いほどに調査が難しくなる傾向が強く、下手すると除霊よりも調査費の方が高くつく場合もあった

まあ一般的には難易度の低い依頼は調査と除霊をセットで依頼を受けることが多いので、今回のような調査だけの依頼でないならば精密な調査をしないで除霊や悪霊が寄り付かないような措置をとって終わることも少なくない

原因が判明しなければ不安だと感じる客には原因究明の調査を行うが、一流の調査専門のGSでも原因究明が出来ない案件は少なくないのでよほどでなければ精密な調査は行われてないのが現状だった


「結局何も出なかったですノ~」

「悪霊や浮遊霊が住み着いてる気配もないしな。 霊障じゃない可能性もある。 とりあえず今日の仕事は終わりだ」

一晩空き家で泊まったのに何の成果もないことに少し疲れた表情を見せるタイガーだったが、緊張感を持って一晩警戒してただけに精神的な疲労を感じてるのだろう

今回の調査は夜明けと共に終了して、ピートとタイガーは解散して帰って行く

雪之丞はそのまま魔鈴宅に戻り報告書を作成して見せれば終わりだった


「霊障の可能性は低いですか」

「ああ、少なくとも悪霊の可能性は低い。 近所の浮遊霊が集まってる可能性は否定出来ないがな」

魔鈴宅に戻った雪之丞は横島達と朝飯を一緒に食べて魔鈴に報告書を渡すが、現時点では霊障の可能性は低いとの報告書である

ポルターガイストとは言うが、室内は綺麗であり破損したりしてる場所はない

加えて悪霊が寄り付くような霊的な重苦しさや陰の気はほとんどなかったのだ

この場合霊障ではない可能性も考えなければならないし、下手すると近所の住人の悪ふざけや嫌がらせの類な可能性もある

この後の調査を続けるかどうかは魔鈴と依頼人の判断だったが、大きな危険や霊障の可能性が低いという今回の報告書は今後の判断材料にはなるし決して無駄ではない

魔鈴が受けるような依頼は今回のように料金の割に手間がかかる依頼もあり、正直危険がない分大変な依頼でもあった


「隠しカメラでも置いて様子を見るべきですかね」

「その方がいいと思う。 あの様子だと仮に霊障でもそれに合うまで何日かかるか分からないからな」

今後の方針は依頼人と話さねば決められないが、魔鈴としては対象の家に普通の隠しカメラでも仕掛けてしばらく様子を見ることを考え雪之丞もそれに賛成する

流石に高価で小型化出来てない霊視ビデオカメラは仕掛けることは出来ないが、一般的な隠しカメラでもポルターガイストなどの異常は記録できる

加えて原因が霊障でない可能性もあることから、あわよくばその原因を掴む為には隠しカメラの設置が最適だった

結局魔鈴は依頼人に調査を継続するならば隠しカメラの設置を提案することを決めて、今回の雪之丞の調査は終了することになる



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