ゆく年くる年

そのまま目的の調査を続ける三人だが雪之丞が霊視ビデオカメラを回しており、ピートは周囲を霊視してタイガーが見鬼君を持っている

霊視に関しては流石に年の功というべきかピートが圧倒的に得意だった

細かい技術がイマイチ苦手な雪之丞やタイガーも最近は霊視を学び修行してはいるが、やはり経験に勝るピートが上である


最も一般的なGSも正直霊視は苦手な者が少なくない

見鬼君や霊視ゴーグルなどの便利な霊能アイテムが存在するだけに、長い時間をかけて霊視を修行するよりはそのような霊能アイテムを使う方が早いのだ

まして一流のGSになれば大型の悪霊や強力な妖怪や魔族と戦うため、基本的にGSは同じ修行をするにしても戦闘系に偏ってしまうようである

まあこれはGS免許が戦闘力を重視してサポート的な能力を軽視した影響もあるのだが……

現代のGSで霊視を修行するのは幼い頃から修行に励む宗教関連の霊能者か、霊視に才能がある霊能者くらいだった

他にはGS免許を取得出来ないレベルの霊能者が霊視を磨いて霊障の調査専門の会社や事務所に就職する件もあるが、やはり才能に左右されるらしく数は多くない



少し話が逸れたが霊視をしながら慎重に調査する三人は、いよいよ建屋に足を踏み入れる


「全然霊の気配がないな」

「実害が少ない霊障は調査が難しいですからね」

中を慎重に調査しながら進む三人だが、基本的に被害が少ない霊障を確認調査するのはなかなか難しい

はっきりいうと誰が見ても分かるような悪霊の方が調査は簡単だった

しかし今回雪之丞達に任された調査は実害はほぼなく調査が難しい件なだけに、魔鈴もなかなかスパルタなのかもしれない


「見鬼君は相変わらず反応しないですケン」

「そいつは浮遊霊クラスだと反応するのが近くにならんと判別出来ないからな」

周囲に気を配りつつもあまり肩肘張らずに進む雪之丞やピートと対照的に、タイガーはやはり緊張気味だった

まあそれでも顔に現れるほどではないのだが、見鬼君がなかなか反応しないのが逆に怖いらしい

ちなみにタイガーが持ってる見鬼君は、雪之丞用にと魔鈴がGS試験の後に厄珍から買ったGSの基本アイテムの一つだった

実は魔鈴自身も見鬼君を一台は持ってはいるが、元々霊視や霊感が得意な魔鈴は自分ではあまり使った経験がなかったりする

この見鬼君は性能により値段にかなりの違いがあり、魔鈴や雪之丞が持ってるのは令子が使うような一般的なGSにしては性能が高い物だった

ただしこの見鬼君は相手が強力ならばそれなりに使えるが、魔鈴が普段相手にするような浮遊霊クラスの悪霊にはイマイチ使えないという欠点がある

基本的に見鬼君は浮遊霊を探知しないようにせして使うため、浮遊霊クラスの相手では霊力の弱さなどからなかなか探知出来ないのだ

しかも浮遊霊クラスを探知出来るように設定すると、無関係な浮遊霊なんかを大量に探知するので普通は浮遊霊クラスの悪霊を探すのには使う者はほとんどいない

そしてこの日雪之丞達が使ってる理由は、霊視が苦手なタイガーが無いよりはマシだと考えたからであった



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