ゆく年くる年

さて一人での仕事を熟し始めた雪之丞だったが、現在一番多い仕事は除霊前の調査であった

霊障の有無や種類を依頼人に尋ねて、見鬼君や霊視ゴーグルを使用して除霊が必要かを判断するのだ

加えて除霊が必要となれば除霊対象の強さや性質などを考慮して、魔鈴に報告書という形で渡すことになっている

ある意味雪之丞の一番苦手な仕事であったが、魔鈴はそれを理解した上であえて雪之丞に調査の経験を積ませていた

霊障の見極めや的確な調査は、GSの基本中の基本なのだ

GS免許取得から半年が過ぎ連日の猛勉強の成果か知識が身について来た雪之丞に、魔鈴は新たなステップとして実地調査をさせていたのである


「周囲に不穏な気配は無しか」

「依頼人の話ではポルターガイストが起きるのは夜だという話ですが……」

「見鬼君も反応しないですノー」

この日雪之丞はピートとタイガーと三人で幽霊屋敷の調査を行っている

元々は魔鈴が受けた依頼をこの日は時間が空いていたピートとタイガーの三人で、勉強を兼ねて調査することになったのだ

場所は東京の外れにある旧街道沿いの町にある築三十年の民家であった

以前の持ち主が死んだ後はなかなか買い手が付かずに長らく売り家になってたらしいが、少し前から夜になるとポルターガイストらしき音がするのを近所の住人が何人か聞いており調査と解決が魔鈴の元に依頼されたのである

依頼人は魔鈴の店の常連の小さな不動産屋で、除霊料金次第では赤字になり困るらしくとりあえず調査を優先してほしいとの希望をしていたのだ

現場は東京都と言っても外れにあり周囲は住宅地と畑が半々くらいの割合で、依頼の家もそこそこ広い庭があって雑草が伸び放題になっている

雪之丞達は調査のためポルターガイストの原因を突き止めるのが目的だが、万が一原因を突き止めても危険性が高くない場合はもちろん除霊は出来ない

正直雪之丞やピートならば一撃で簡単に片付く依頼でも、一旦調査をしてその結果を依頼人と相談してから除霊する必要があるのだ

依頼人は顔なじみではあるが、基本的には調査した結果を元に依頼人に除霊をするかしないかを最終判断させることが必要だった


「犬か猫でも住み着いてるんじゃねえだろうな」

「その可能性はないみたいですよ。 一応不動産屋の人が何度か確認したらしいですし、その時は異常はなかったそうです」

辺りを警戒しながら目的の家の庭や周囲から確認していく雪之丞達だったが、正直危険な被害がない依頼だけに霊障があるかないかから判断せねばならない

ちなみに横島がお盆に買った霊視ビデオカメラは今日の仕事にも持参しており、地味に仕事の役に立っていたりする

現実的な被害が少ない霊障の場合、依頼人を納得させるのに霊視ビデオカメラは非常に便利だった

魔鈴の場合は常連などが相手なため疑われることはないが、それでも除霊対象が記録された映像は依頼人の評判がいいのだ



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