ゆく年くる年

忙しい十二月も半ばに差し掛かろうとしていたその日、魔鈴宅ではすっかり恒例になった愛子を教師役にした勉強会が行われていた

今のところ独立するつもりがない雪之丞も、相変わらず勉強会には参加しており苦労しながらも勉強を続けている

これに関しては雪之丞本人の意思でもあるが、最低限独り立ち出来るだけの能力は学んでおくべきだとの魔鈴の意思が反映されてた

同じ見習いのタイガーは元よりすでに見習いを卒業したピートですら、たまに参加するのだからGSがいかに大変か改めて分かる結果となっている

ただここ数ヶ月のこの勉強会の成果は着実に出ており、雪之丞も報告書を書けるようになったことなど大きな進歩をしていた


「今日はピートさんも居るからニンニクは抜かなきゃね」

一方の魔鈴は勉強会が行われる日は参加した者達も夕食に誘っており、この日は愛子・タイガー・ピートの分をいつもより多く夕食を作っている


そんな魔鈴の作る夕食は横島達のリクエストを聞く時もあるが、基本的には店の営業で余った食材を見て決めることが多い

そもそもレストランの営業では、品切れにならないように食材が余ることは必要なことであり余った食材は廃棄になる

他にも食材の切れ端なども残ることが多く、魔鈴はそんな食材を日々の食事に役立てていた


「あいつらは本当によく食べるにゃ~」

魔鈴はすでに夕食の支度を初めてるが横島達がまだ店の後片付けや掃除をしてる最中であり、この時自宅のキッチンには魔鈴と使い魔の黒猫の二人しか居ない

少し口が悪い使い魔の黒猫に魔鈴は苦笑いを浮かべつつも楽しそうに料理をしていく


「いつの間にか賑やかになったわね。 貴方と二人で食事してた頃が嘘みたいに……」

コトコトとスープを煮込む魔鈴はつまみ食いしようとした黒猫を嗜めつつ、ふと以前の生活を思い出してしまう

以前の生活が寂しかった訳でもないし不満があった訳でもないが、それでも以前のような生活に戻りたいとは全く思わないのだ

一緒に住む横島達が居て、毎日夕食を食べてから帰る雪之丞がいる

そして愛子やピート達が来たかと思えば、たまに来るカオスやヒャクメがいたりと賑やかという意味では本当にそのままであり飽きない毎日だった

こんな毎日が続けばいいと魔鈴は一人料理と向かい合う


「それはいいけど……、魔鈴ちゃん作り過ぎだにゃ」

「あら? そういえばちょっと多いですね」

しばし過去と現在と未来に想いを馳せていた魔鈴は、ついつい料理を作り過ぎてしまったらしく大量の料理が完成間近であった

基本的に料理を作るのが好きであり楽しい魔鈴にとっては料理は全く苦労ではないらしい


「まあ、いいわ。 ピートさんに帰りに持って帰ってもらって、唐巣神父におすそ分けしましょう。 冷凍すれば日持ちもしますから……」

最終的にちょっとした宴会か相撲部屋の食事のような量の料理が出来たが、余った分は唐巣におすそ分けしようと決めたようだ

GS協会の幹部就任以来食事には困ってないらしいが、今度は忙しくて食べれない時があるらしいのだ

まあそれでも一日二食は必ず食べてるようで、ピートを含め周りの人間は安堵したとか……

結局魔鈴は余った分の料理を一食分づつに小分けにしてピートに持たせることにしたらしい



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