ゆく年くる年

その日の放課後、魔理を含めた数十名が真剣に修行するのを遠くから静かに見つめてる者達が居た


「みんな頑張ってるわね~」

「はい、朝晩の修行を求める者は他に頼るところがない生徒が多いですから」

修行する生徒達を見て満足そうな表情を見せるのは六道冥菜と年配の教師である

外から見るとしっかりとしたカリキュラムで教育されてるように見える六道女学院霊能科だが、今だに試行錯誤の日々でもあるのだ

次世代の優秀な霊能者の育成は業界や六道家に限らず日本の財産になるはずだと始めた霊能科だが、細かな問題や課題は今だに多いのが現状だった


「魔理ちゃんはどう~?」

「よく頑張ってるのは確かです。 卒業間近な生徒が参加するのは異例ですし、周りの生徒の反応は決して良くはないんですが……」

さてこの日冥菜が修行を見に来たのは、他でもない魔理の状況が気になったからである

別に魔理を特別扱いはしてる訳ではないが、アシュタロス戦の真実を知り苦悩した件を知っている冥菜としては魔理の行く先が気になるようだった

年配の教師はそんな魔理の評価を説明するが、まだ修行に参加したばかりの現状ではやる気を評価するしかなかない状況らしい

周りの生徒の微妙な反応や噂を気にせずに頑張ってることは評価するが、実力や今後の見通しはまだなんとも言えないのが現状である


「もう少し考えないとダメかしらね~」

必死に修行する魔理の様子を見つめる冥菜は、彼女の卒業後を考えるとなんとも言えない表情を見せていた

現状でも六道女学院霊能科は十分霊能者育成機関として成立しているが、それでも魔理のような一般人の割合は少なく一般人からGSになった者も決して多くはない

六道家がいくらGS業界を改革しても、業界全体に蔓延る閉鎖的な体質はなかなか変わらないのが現状である

現状の日本でオカルト技術を幼い頃から学ぶには、自社仏閣や教会などの宗教関連の弟子入りしかないのが現状なのだ

しかし宗教系の弟子入りは厳しく長い修行が必要な上、宗教の影響が強く一般人にはなかなか敷居が高いのが現実だった


「何かお考えなのですか?」

「うちを卒業した子達にもう少し可能性を広げてあげたいのよ~」

現状のオカルト業界は一般人には優しくないが、冥菜はもっと一般人がGSを目指しやすい環境が必要だと昔から考えている

そして魔理のように三年間では間に合わず、中途半端に終わる生徒も決して少なくはない

多くの生徒は高校三年になる前に他者と自分の才能や能力を見極め、GSになるのを諦めてしまうのだ

特にオカルト業界にツテがない一般人の生徒はその傾向が強く、就職や進学に切り替える者が多かった

本当は六道女学院でもう少し指導してやりたいが、現状の教師の人数ではなかなか難しい


「そろそろ次のステップに上る時期なのかもしれないわね~」

やる気がある者が業界の都合で諦める姿を何度も見て来た冥菜は、必死な魔理の姿に現状を変える必要があると強く感じたようだ



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