ゆく年くる年

「はい、三回どうぞ」

魔鈴の育った孤児院の仕事など十二月も忙しくなりそうな気配がある中、この日横島は店がある商店街の一角で行われてる福引きの手伝いをしていた

日頃から商店街の話し合いや清掃活動なんかにはきちんと参加する魔鈴達なだけに、今回の福引きにもきちんと協力している

流石にお昼時などの忙しい時間は無理だが、午前や午後のあまり混まない時間には横島かシロかタマモが何度か協力することになっていた

流石に魔鈴は店を空けられない為に協力出来ないが、商店街には店の常連の顔なじみも多く横島やシロのみならずタマモが会話する相手もいる

商店街には正直そうそう暇な人間が居る店はなく、それぞれが時間を作って協力して福引きをしてるらしい


「いや~、今日は寒いね。 こんな日に空を飛ぶのって相当寒そうだけどどうなの?」

「冬はやっぱり寒いっすよ。 魔法のほうきに暖房なんてついてないですし」

福引きを手伝いながらも同じように手伝ってる商店街の人と世間話をする横島だったが、横島は当然商店街の人間に顔を覚えられている

魔鈴の代わりに商店街の清掃活動なんかに参加することも多いし、何より毎日魔法のほうきで空を飛んで配達してる訳だから嫌でも顔を覚えられるのだ

最早横島や魔鈴が魔法のほうきで飛んでも誰も驚かない商店街の人々だが、それでも空を飛ぶ横島が珍しいのには変わりはない

高い場所が怖くないのかとか、落ちないのかとかよく聞かれる質問だったりする


「へ~、渋滞がないのは羨ましいけどやっぱり寒いのか」

「バイクみたいなもんっすよ。 上空は風があるんであんまり荷物も運べませんしね」

話をしてる相手も配達をすることがあるらしく渋滞がない横島が羨ましいようだが、寒いことや風のことを聞くと早々楽ではないと感じたようだ


「それにしても特賞がハワイ旅行って凄いですね」

「ここだけの話、下手な国内よりも安いんだよ。 箱根くらいならまだ安いけど、今時箱根じゃ目玉にならないからな」

福引きの手伝いとは言うが、実際には福引き券の確認と商品の引き渡しだけである

一応横島と商店街の親父の二人でやっているが、まだ福引きの期間が始まったばかりであり客も少なく暇だった

石油ストーブで暖をとりながら世間話をする方が圧倒的に多いようである


「そういや家の親戚が最近悪いことばかり起きるから、悪霊にでも取り憑かれてるかもって心配してたんだけどどう思う?」

「俺はあんまり詳しくないんではっきり言えないですけど、その手の話はほとんどが気のせいですよ。 ただ一度霊能者に見てもらった方がいいとは思いますけど……。 魔鈴さんに話してみましょうか?」

「いや、そこまでしてくれなくていいよ。 親戚は北海道に居るんだ。 参考までに聞きたかっただけだから」

その後も福引きの客はほとんど来なく途中で心霊相談なども少し話するが、特に問題もなく時間は過ぎていく

商店街の人々などには横島自身はGSではないと公言してるが、魔法のほうきに乗ってるせいかたまに相談されることがあった

ただ実際に霊障だった件はほとんどなく、気のせいや考え過ぎだったことがほとんどだった



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