ゆく年くる年

慌ただしかった十一月も終わると、いよいよ今年も残り一ヶ月となる

魔法料理魔鈴ではクリスマスの飾り付けをしたり、冬の新作メニューを考えたりと相変わらず忙しい

みんなでアイデアを出し合いながら協力して一つ一つ準備していくのは、大変なこともあるが楽しくもあった

魔鈴はレストランに除霊にと相変わらず忙しいが、それでも一時期に比べると負担が減っている

レストランでは横島達の成長により負担は少しずつ減っているし、除霊も雪之丞の成長により確実に負担は減っているのだ

まあ魔鈴の場合は余裕が出来ると魔法の研究や自身の修行などをするので、相変わらず暇ではないが余裕があることには変わりはない


最近一つ変わったことと言えば、魔鈴がタマモに魔法料理を教え始めたことか

独学で魔法料理の技術を習得したタマモに、魔鈴は店の営業の傍らで自身の魔法料理を少しずつ教えている

横島がタマモやシロの将来を考えるのと一緒に魔鈴もまた二人の将来を考えており、例えどんな未来になろうとも魔法料理の技術は未来のタマモの助けになるだろうと確信していた

そして何より人間の五感を越える超感覚を持つタマモがどんな魔法料理を作っていくのか、魔鈴自身が見てみたいとも思っている

結果タマモは水を得た魚のように魔鈴の技術を吸収し学んでいた



「ええ、こっちは特に異常はないわ。 時々探るような人は居るけど、多分魔鈴さんの技術狙いの同業者ね」

「分かりました。 同業者の件はこちらでも少し調べてみますが、私の名前が効いてるうちは大丈夫でしょう。 では次回もお願いします」

それは十二月に入ったばかりのある日の午後のこと

昼のランチタイムも終わり休憩時間に近所に散歩に行くと店を出たタマモは、周囲に人気のない路地裏に行くと通信鬼で小竜姫に定期報告をしていた

以前小竜姫達からの協力要請を受けたタマモは、週に一度ほど小竜姫達と情報交換をしている

タマモは現在でも月に一回か二回は妙神山を訪れてるが、この手の情報のやり取りは基本的に通信鬼を使った通信だけであり直接会った時に話すことはなかった

横島も魔鈴もシロも結構勘が鋭いので、直接会った時には話すタイミングがないのだ

別にやましいことをしてる訳ではないが横島達には知らせぬ方がいいというのが、小竜姫達とタマモの共通意見なのである


「さて、おやつでも買って帰ろうかしら」

今回も何事もなく定期報告が終わったことに安堵したタマモはホッと一息つき、最近ハマってる焼き芋屋さんに向かい歩き出す


実はタマモは小竜姫達からの情報でいろいろと知ってしまったのだ

横島が神魔界でいかに微妙な立場であるかを……

それは小竜姫達に協力する代償として、タマモが神魔界での横島の立場や現状などの情報を求めたからなのだが

例えどんな状況であろうとも知らねば何も出来ないと考えるタマモは、一人最悪の未来を警戒して動いていた

横島にも魔鈴にもシロにも知られることなく影に徹するタマモの存在は、横島の平和な生活を守る大きな役割を果たしてるが今のところ横島が気付く気配は全くなかった



25/100ページ
スキ