「君達は少し勘違いをしているね…」

令子を聖者で横島を人間の屑のように言い切る二人に、唐巣は言葉を選びながらも語り出す


「美神君は確かに超一流のＧＳだ。　しかし、世の中に完璧な人間など居ない。　美神君にだって欠点はたくさんある」

言葉を選びながら語る唐巣の表情は悲痛と言ってよかった

令子の師匠たる自分の責任の重さに苦悩しているようだ


「でも！　美神お姉さまは自らの危険も省みず世界を救いましたわ！！」

まるで狂信者のように令子のことになると怒りの感情を表わすかおりを、唐巣は悲しそうな表情で見つめる


「雪之丞君とタイガー君、君達は何も話してないのかね？」

「俺は言ったさ。　美神令子は金に汚い人間だって！　だがこいつは信じねぇ！！」

唐巣の問い掛けに苛立ちながら答える雪之丞を、かおりは睨みつける


「そうか……」

苦悩する唐巣の姿に、誰も言葉を発せずに部屋の中は静まりかえった


「君達は真実を知らなければならないようだね。　確かに美神君は結果的に世界を救った一員だった。　しかし真実は違うのだよ」

「神父！　こいつらにその話をする必要はねぇだろ！　知る覚悟も資格も無い！！」

突如語りだした唐巣の言葉を遮るように怒鳴る雪之丞

甘ったれた世界に生きているかおりと魔理には知る資格がないと思っている


「雪之丞君、彼女達の立場からすればいずば知る必要はあるだろう。　彼女達は知らないがゆえに横島君やおキヌ君を傷付けてるのだからね」

唐巣の言葉に雪之丞は悩むように無言になる

そしてかおりと魔理は、おキヌを傷付けてると言われたことに驚きを隠せない


「本当は君達のような見習いＧＳに、私のような部外者が話すべきでは無いのだがね…」

唐巣は目を閉じて静かに語り出す


「令子君はとても不器用な人間だ。　人付き合いも苦手で友達もほとんど居ない。　君達のイメージとは正反対かもしれないね。　それにとてもシビアで現実的だ。　お金さえあればどんな困難な依頼も引き受けるが、逆にお金が無いと相手にしない。　私が彼女に手を貸して貰うのでも彼女は料金を請求する。　彼女は普通のＧＳと変わらないのだよ」

唐巣の語られる話を信じられない様子で見つめる二人

そんな二人が驚く話はまだまだ続いていく


「それに君達が馬鹿にした横島君だが、彼がどんな待遇で働いていたか知らないだろ？　彼は時給２５５円でずっと働いていたんだよ」

唐巣が語る令子や横島の真実に驚き信じられない様子の二人


「そんな馬鹿な話あるか！？　何処の世界にそんな非常識な給料で働く奴がいるんだよ！　それにおキヌちゃんは普通に給料もらってるはずだ！！」

「本当だ。　横島とおキヌの給料は１０倍から２０倍は開きがあるんだ。　美神令子もおキヌも横島にそれを隠してるつもりらしいが、本人は知ってる。　横島がおキヌを信用しなくなった理由の一つだ」

唐巣の話を疑うように怒鳴る魔理に、雪之丞は渋々真実を語りだす

一方かおりと魔理は唐巣や雪之丞達の表情に嘘をついているとも思えず、混乱気味になっていた


令子とおキヌと横島の複雑な人間関係をこの二人に説明するのは簡単ではないが、完璧な存在だと思っていた令子の裏側

そして誰にでも優しいおキヌの優柔不断と言う欠点に言葉が出ない