ゆく年くる年

そんな魔理の件から数日が過ぎた十一月の中頃のとある日、横島と魔鈴は二人で買い物に街に出ていた


「これなんかもいいですね」

二人が買い物していたのは都内から少し外れた場所にあるショッピングモールであり、この日は横島の冬服を買いに来ていて何件か洋服屋を周り横島に合う服を探していく

自分の服をそっちのけで横島の冬服を選ぶ魔鈴だったが、これには訳があり先日衣更えをしたのだが例によって横島にはろくな服がなかったのだ

高校時代はほとんど服を買ってないのでサイズが微妙に小さかった服もあり、全体的に着古した感じの服が多いのである

結局魔鈴は横島を連れて買い物に来ていたのだった


「そういえば横島さんはジーンズばっかり着てましたね」

「あれ丈夫で長持ちするんっすよ。 あの頃は食べる物にも困ってましたし……」

服を選びつつ一人暮らしの頃の横島を思い出す魔鈴だったが、服の大半がジーンズだったことを思い出す

好きなのかもしれないがもう少し服にバリエーションがあればよかったと魔鈴は考えるが、横島は好き嫌い以前に丈夫で長持ちさせることしか考えてなかった
 
一応少しはファッションを気にした服もあったが基本的に数が少ない

魔鈴は一人暮らしの頃の横島を思い出し思わず苦笑いを浮かべてしまう


(あの時は勢いで一緒に暮らすことにしましたけど、正解だったのでしょうね)

正確には高校三年の途中からは魔鈴との除霊でそこそこ収入はあったはずなのだ

しかし横島は服にお金を使うことはしなかったし、正直身嗜みもいい加減だった

まあルシオラの件があり精神的な余裕がなかったのは理解してるが、それを抜いても横島の性格では放っておくといつまでもあのままだったなのだろうと考えると、一緒に暮らすことにした自分の判断は正しかったとシミジミ感じる

服装や身嗜みは見た目や性格が悪くないのに評価が低い、横島の典型的な問題点だった


「もっと早くファッションに気を使ってれば、モテてたかも知れませんよ」

「それはないっすよ。 美人やイケメンは何着ても似合うけど、俺は何着てもネタにされるだけでしたよ」

元々魔鈴は横島がファッションに敏感な若者になるのを望んでる訳ではないが、それでも最低限は普通に気にするようになって欲しいとは思う

しかし横島のコンプレックスは本当に要らないことばかりに頑固だった


(もうちょっと根本的な改善が必要ですかね)

一緒に暮らすようになってから横島は十分成長してるが、それでもまだまだ先は長いのだと魔鈴は密かにため息をつく

魔鈴自身は決して服装や身嗜みで横島を判断はしないが、魔鈴以外の普通の人間は別である

正直な話をすれば魔鈴でさえも自分の恋人が人に悪く見られるのは面白くはないし、人として最低限の身嗜みや服は持って欲しいのが本音だった

ただこの辺りは横島に言っても無駄であり、気長に意識改革をするしかない

結局魔鈴は自分好みの服を横島に着せることから始めようと考えたらしい



21/100ページ
スキ