ゆく年くる年

「なるほどな~」

魔理の話を無言のまま静かに聞いていた鬼道は、途中驚きの表情を見せながらも予想以上に真剣な相談内容だったことから鬼道自身も少し考え込んでしまう


「正直僕も魔鈴さんの言い分は最もやと思うわ。 まあ比べる相手は間違った気はするけど……。 横島君はずっと会ってへんから知らんけど、臨海学校の時の伊達君と近いレベルだとすると並の霊能者のレベルやないな」

少し考えた鬼道は素直に魔鈴の言葉を支持するが、同時に雪之丞レベルの相手を頭に入れてる魔理にそれは間違いだろうと告げる

少なからず魔理の対人戦闘の実力を知る鬼道としては、横島や雪之丞やシロを基準に考えるのは間違いだと考えてるようだ


「一文字がどんなGSを考えてたかは知らんけど、一般のGSは悪霊とガチンコ勝負する機会って正直あんまりないんやで。 唐巣神父とか美神さんのような一流になれば別やけど」

鬼道は魔理の話から魔鈴の意図を汲み取り話を始めるが、実は魔理は若干誤解をしており戦闘に関する欠点ばかり考えていた

魔鈴の基礎からやり直せという言葉も、霊能全般というよりは霊的戦闘技術なのかと考えていたのである

鬼道はその勘違いに気付き諭すように話をしていく


「戦い方に問題があるのも確かやけど、多分魔鈴さんが言うてたのはもっと根本的な問題やで。 例えて言えばGSは医者みたいなもんなんや。 原因の究明から始まって治療をして薬を出す。 治療が除霊だとするとよう分かるやろ。 ただ勝てばいい訳やないんや」

基本的に脳筋な魔理にも分かるように鬼道はGSを医者に例えていた

医者とGSは全体的な流れなんかは結構似てるのだ

そのままいかに除霊が繊細で難しい物かを魔理に説明していく


「やっぱりこのままじゃ……」

「厳しいことを言うと仮にGS試験受かっても一文字やと使いにくいわ。 非戦闘系のGSのボディーガードみたいな仕事ならあるかも知れんけどな」

魔鈴の言葉の真の意味を教えられた魔理は、現実の厳しさに落ち込んでしまう


「本当にGSに成りたいんなら一文字も朝と放課後の修行に来るか? ただし授業の時のような態度なら誰も教えてくれへんで」

悔しさと落ち込む気持ちをなんとか奮い立たせようとする魔理に、鬼道は朝と放課後の修行に参加するかと問い掛ける

ただし朝と放課後の修行に関しては学校のカリキュラムではないので、扱いも厳しくなるしやる気のない者や態度が悪い者は相手にしない

一応学校から特別手当ては出てるが、基本的には時間外なので朝と放課後の修行に教える教師は個人の好意で教えていた

鬼道はほぼ毎日教えているが、他の霊能科の教師はある程度ローテーションを組んで交代で教えている

それだけ通常の授業に加えて朝と放課後に教えるのは、教師側の負担も大きいのだ


「それと一年からの霊能の授業の内容も復習しとくんやで。 あれはGSとして最低限の知識なんや」

鬼道は魔理に対し進むべく道の一つを示すが、それは魔鈴よりも遥かに厳しい道だった



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