ゆく年くる年

一方魔鈴宅を後にした魔理とタイガーだが、予想以上にダメ出しされたことで魔理は少々荒れていた

シロには圧倒され何も出来ずに、魔鈴には評価以前の問題だと言われたようなものなのだから当然だろう


「魔理サン」

「あの人の言う通りなんだよ。 私はロクに授業も聞いてなかったし、先生の言うことも従わなかった。 実際それでもやれる自信はあったんだけど……」

心配そうなタイガーだが、魔理は言われたことを一切否定出来ない自分の現状に苛立ちを感じていたようだ

実際魔理はこの三年間で確かに成長した自覚はあったが、それ以上に教師に従わなかった部分も多かったのである

除霊と喧嘩を一緒に考えるような魔理には教師陣も幾度となく指導はしたが、魔理は指導をあまり聞かずに自己流で勝てる方法を追求するのみだった

そんな魔理に教師陣も次第に指導することが少なくなり現状に至るのだが、魔鈴の言葉はそんな魔理の三年間を否定するようなものなのだから悔しくないはずがない


「今のままじゃダメなのか?」

何に苛立ち何が悔しいかも分からずただ迷う魔理だが、それでも魔鈴が何故あそこまで言ったのかを考える冷静さはあった

そして魔鈴自身も実力が上だと認める雪之丞が、何故魔鈴の弟子として学んでるのかを考えるだけの頭もある


「結局、私は半端なままだったってことか……」

心配そうなタイガーと分かれ自宅に帰る魔理だったが、結局はモヤモヤした気持ちが纏まらぬままこの日を終えてしまう

魔鈴の言葉に反発するつもりはないのだろうが、だからと言って自分の三年間を否定するような言葉を素直に受け入れるのは簡単ではない

気持ちや心が定まらぬ魔理は、そのまま眠れぬ夜を過ごし一夜を明かすことになる



次の日ほとんど寝れなかった魔理は、そのまま朝一で担任の鬼道に相談しようと学校に向かう

あまり人には聞かれたくない相談の為に朝の六時半には学校に到着したのだが、そんな魔理が見たモノはすでに霊能の指導をしている鬼道や数名の教師陣だった

指導を受けていたのは魔理と同じ三年のGS専攻クラスの生徒や、一・二年の生徒など五十人ほどである

通常の授業と比べものにならないほど鬼々迫る緊迫感の中での指導が行われていた


「あれ一文字、どないしたんや? こんな早くに……」

あまりの緊迫感に声をかけることが出来なかった魔理はしばらく外から眺めていたが、偶然鬼道が魔理に気付き声をかける


「あの……、ちょっと相談に乗って欲しくって……」

魔鈴の言葉に続き始めて見た早朝の指導の様子に驚き毒気を抜かれたような魔理は、らしくないほど大人しい表情で鬼道に相談したいと頼む

そんな始めて見る魔理の姿に鬼道は生徒の指導を他の教師に頼み魔理を生徒指導室に連れていく


「何かあったんか?」

反発することが多く教師の言葉にあまり従わない魔理だったが、鬼道は持ち前の生真面目さから気にするそぶりもなく事情を尋ねる

そんな鬼道に魔理は昨日の出来事を話し始めた


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