ゆく年くる年

「相変わらずはっきり言うな」

その後魔理は素直に礼を言って帰ったが、第三者ならば普通は遠慮するようなことを遠慮なく言いきった魔鈴に、雪之丞は僅かに好意的な笑みを浮かべていた

普段は気配りや思いやりを当然のように出来る魔鈴だが、事がオカルトに関することになると結構遠慮が少なく厳しい

横島に対しては流石に精神的な問題から対応が違うが、雪之丞に対してはダメなところはダメだとはっきり言うし中途半端な指導はしてないのだ

指導そのものは親切で丁寧なのだが、その分人並み以上に厳しいのも確かだった

雪之丞自身はそんな魔鈴の指導が好きであり気に入っている

魔鈴も雪之丞もお互い分野は違うが一つの道を突き詰めようとする価値観は似てる部分があり、そういう意味では雪之丞に合う指導なようだ


「私も好きで言った訳ではありませんよ。 ただ、あのままでは彼女のためになりませんから」

雪之丞は魔鈴を評価するような感じだが、魔鈴自身は多少迷った部分もある

正直今後に責任が持てない第三者が言うべきことではないと魔鈴は考えてもいるし、言い過ぎだとも思うのだ

そこを理解してもなお言ったのは、心配そうなタイガーを見てられなかったからだった


「魔理さんには悪いけど、木刀と特攻服で除霊に来られた客はたまらんだろうな」

「表情や言葉遣いは仕方ないとしても、流石にそんな格好で除霊をされるのはちょっと……」

一方他人にキツくされるのに慣れて価値観がおかしい横島は魔鈴がキツいことを言ったことに関してはあまり気にしてないが、そもそもの問題としてヤンキースタイルの魔理が苦手だというシンプルな理由があった

元々喧嘩も出来ない横島なだけに、魔理のようなタイプは本能的に苦手だったりする

実は魔鈴があそこまで言った理由の一つには横島がこぼした特攻服の件も影響しており、流石に誰かが言わないとろくな未来がないと心配にもなったらしい


「魔理さんは恐らく六道女学院の指導をきちんと聞いてないのかと思ったんです。 私自身も基本的には自己流ですので自己流を否定するつもりはありませんが、あれでは……」

「なまじ除霊が出来るから中途半端なんだろうな。 実際一般的な低級霊なら問題ないだろうしな」

魔鈴も雪之丞も基本的には自己流に近く自己流を否定はしてないが、中途半端に強い魔理の経験が霊能者としての実力向上の足を引っ張ってると感じたのは同じだった

正直やるなら雪之丞のように、人生を賭けるほど徹底すればよかったのかもしれない


「三ヶ月でどこまで出来るものなんっすか?」

「それは本人次第でしょうね。 ただこのままでは師匠は見つかりませんし、どのみちGSにはなれませんよ」

卒業まで残り三ヶ月でどこまで出来るのか少々疑問に感じる横島だったが、魔鈴はどのみち現状ではGSになるのは不可能だと言い切る


「彼女が本気でGSになりたいのならば、来年の三月までがラストチャンスでしょう」

結果がどうなるかは誰にも分からないが、魔理がまともなGSを目指すならば残り少ない学校生活が鍵を握るのは確かだった

魔鈴には今日のアドバイスを魔理が活かしてくれるのを願うしか出来ないが……



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