ゆく年くる年

結局横島と雪之丞の手合わせは雪之丞の勝ちで終わるが、魔理からすればどちらも桁違いだったとの印象しかない

そのまま魔理自身はシロとの手合わせを始めるが……


「あの馬鹿……」

「シロに相手に合わせて戦うなんて無理なのよ」

それは手合わせにもならなかった

シロは霊波刀で構え魔理は自前の木刀で構えるが、シロの霊波刀は魔理が霊力を込めた木刀をあっさりと切り裂いてしまう

しかもシロは木刀を切ろうなどとは思ってなく、ただ普通に軽く打ち込んだだけなのだ

あまりの展開にシロはキョトンとしてしまい、魔理は呆然とするしか出来ない

横島と雪之丞はシロが予想以上に手加減しなかったことに頭を抱えるが、タマモは割とこの結果を見抜いていたようで驚きはない

まあシロも魔理が格下なのは理解しておりそれなりに力を抜いてはいたが、そもそも人狼の霊波刀を木刀で受け止めるなど無理なのだ


「魔理さんには私の神通棍を貸しますので使って下さい。 シロちゃんは魔理さんの体には攻撃しないでね」

一方の魔鈴もこの展開には流石に驚き固まっていたが、これで終わりでは流石に可哀相だと思い神通棍を貸してシロには更なるハンデを加える

はっきり言うと実力の違いはすでに明白なのだが、このままでは魔理は納得しないだろう

そのまま仕切直しして改めて手合わせをするが、まあ結果は大人と子供の勝負というか全く勝負にはなってなかった


「……雪之丞さん、あれはどうなんでしょう?」

「喧嘩だな。 俺は嫌いなタイプじゃないが、あれじゃGSは無理だろう」

改めて始まったシロと魔理の手合わせを見ていた魔鈴だったが、魔理の戦い方はヤンキーの喧嘩にしか見えない

判断に困った魔鈴は戦いが専門の雪之丞に意見を求めるが、雪之丞は魔理の戦いに理解を示すが同時に今のままではGSとしては無理だと言い切る


「どうしたらいいんですかいノー?」

「まともな師匠を見つけることだな。 俺も人のこと言えないから分かるが、あのままじゃろくな仕事がないぞ」

どう判断していいか迷う魔鈴とこのままではダメだと言う雪之丞に、タイガーは困った様子で打開策を尋ねるが答えは扱くまともなものだった

雪之丞自身も元々は似たようなタイプだし現在は魔鈴に師事してるからこそ言えるのだろうが、中途半端に対人戦に特化してもGSとしての仕事はあまりないのだ

対妖怪や対魔族にしては弱いし、かと言って魔鈴がやるような依頼は向かないだろう

結果的にはまともな依頼が出来ないことになってしまうのだ


「魔理さん確か除霊に特攻服とか着てたよな。 あれだと客が逃げ出すよな」

「…………特攻服ですか」

そして判断に困っている魔鈴だったが、横島の何気ない呟きに流石に引き攣った表情を浮かべてしまう

暴走族のような姿で除霊するGSなど見たことがないし、まともな仕事がないという雪之丞の意見が正しく全てだと感じていた



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