ゆく年くる年

「お前とやるとしんどいんだよな~」

「楽に勝てる相手ならやる意味がないだろ」

結局魔鈴の提案通り横島と雪之丞が手合わせすることになるが、正直横島は気が進まない様子である

強くなりたいという想いは共通する二人だが、決定的に違うのは手合わせというか戦いを楽しめる雪之丞と全く楽しめない横島の差だろう

趣味と実益という訳ではないが、戦いに全てを賭けることが出来る雪之丞が横島は羨ましかった


「なっ……」

そんな二人の手合わせを見る魔理だったが、手合わせが始まると驚きの余り言葉が詰まってしまう

やる気と自信に満ちてる雪之丞と表情が優れず今にも逃げ出したそうな横島が、戦いを始めた途端に双方が接近して近距離での戦いを始めたのだから

過去を聞き頭では理解していた魔理だが、実際に横島がどうなのかは半信半疑な部分もあった

魔理が一睨みすれば逃げ出しそうな横島なだけに、正直想像が出来なかったという方が正しいのだろう

霊力・スピード・パワー共に横島と雪之丞は桁違いだった

弓かおりはそんな雪之丞との実力差にGS試験時に気付いていたが、残念ながら魔理は今初めて知ったのだ

その衝撃は言葉で表現するのは難しいかもしれない


「一応言っておきますが、二人はあれが全力ではありませんよ。 残念ながら全力を出すと危険過ぎるので……」

衝撃を受ける魔理に魔鈴は更なる事実として、あれが普段の修行レベルの手合わせであり全力ではないと告げる

ある意味魔理にとって横島と雪之丞の手合わせは、次元の違う実力差を知る以外は得るモノがなかった

実際横島や雪之丞は技術的には既存のGSを大きく越えるモノはあまりない

ただ戦闘力という部分に関しては既存のGSを大きく引き離しているのだ

正直魔理が見て理解出来るのは、横島と雪之丞が普通じゃないということだけだった


「ただあのレベルの戦闘は私も全く出来ませんし、出来ないからと言ってGSになれない訳ではありません。 正直に言えばうちで一番弱いのは私ですから」

衝撃というかショックで思考が止まってる魔理に、魔鈴は多少苦笑いを浮かべて現実的な話に戻していく

そもそも横島や雪之丞クラスの戦闘力が除霊に必要かと言えば、正直微妙なのが現実である

無論強くて困ることはないが、対人戦闘にだけ特化されても仕事が限られるだけなのだ


「一番弱いって……」

「私自身も修行の為に、シロちゃんやタマモちゃんに相手になってもらってるんです。 私は元々GSに成りたかった訳ではないので、対人戦闘はほとんど考えたことがなくって」

横島達の手合わせに続き魔鈴が一番弱いと聞き、魔理はシロやタマモを見るが二人が正直それほど強そうには見えない

特にタマモに関してはあまり関わりもなく、妖狐だとは知っているが具体的にはほとんど知らない相手なのだ

そしてもう一つの驚きは魔鈴にはGSのプライドが見えないことだろう

唐巣や令子やエミには見えた分かりやすいGS特有のプライドが魔鈴にはない

自分の弱さを隠しもしないし、まだ子供にも見えるシロやタマモに教わってると言い切る魔鈴の心情が魔理には理解出来なかった



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