ゆく年くる年

「横島さんと一文字さんでは勝負になりませんよ。 横島さんと雪之丞さんの手合わせを見学するのでいかがですか?」

女が相手だとやりたくないと言う横島に魔理はムッとするが、困った様子の横島を見て魔鈴が仲介案を出す

正直魔鈴は魔理の実力を知らないが、流石に横島とでは勝負にすらならないのは理解している



実は魔鈴と一緒に住み始めて以来横島の霊能の修行時間はかなり減ったが、そんな今でも地道な基礎修行は続けているのだ

最も横島と雪之丞の戦闘の実力差は一時期よりも開いてしまい、現在は再び雪之丞の方が強くなってしまったが……

一人暮らしの頃は無茶苦茶な修行により驚異的に霊能や戦闘の実力を伸ばしていた横島だったが、魔鈴がそれにセーブをかけた結果横島の成長スピードは格段に落ちている

反面で雪之丞は魔鈴の技術面での指導の結果、以前よりも成長スピードが増したのだから横島との実力差が再び開いてしまったのだ

ちなみにこの実力差に関しては、文珠と魔装術を抜いた実力差を基準にしている

流石に文珠と魔装術は双方にとって危険過ぎるので使用出来なかった


そんな訳で雪之丞ほどではないが、横島もまた地道な修行で僅かだが成長は続けている

二人の成長スピードの差に関してはGSを目指し修行や実戦経験を日々積極的に積む雪之丞と、レストランに主体を移した横島では当然の差であった

加えて精神面の強さと安定性が横島と雪之丞では全く違っていたことも大きい

魔鈴としても雪之丞には積極的に技術を教えているが、横島には基礎を固める以上は教えてないのだ

はっきり言うと横島の精神面と技術面は、基礎を固める段階を越えることが出来ないレベルだった

ただここで言っておくべきなのは、現状でも横島の実力は現代のGSのレベルを越えてる点だろう

そもそもアシュタロス戦の時点で横島の戦闘力は令子を越えつつあったのだ

無論経験や判断力など実際に戦えば令子より遥かに劣る部分も多いが、雪之丞や以前知り合った天狗との手合わせで確実に実力を伸ばしているのは確かである

魔鈴はそんな横島に霊能のイロハを本当の基礎から教えた為に、総合的にはかなり実力が上がっていた

まあ比べる相手である雪之丞もまた普通ではないのでアレだが……


「魔理さんは横島さんが言った通り、シロちゃんと手合わせしてはどうです? 仮にシロちゃんに勝てるならば横島さんと手合わせする価値もありますし……」

結局魔鈴は横島と魔理の対戦を認めない立場を優しく丁寧な口調で説明するが、口調の割に魔鈴の言葉はキツかった

魔鈴は横島と手合わせするには、魔理の実力が足りないとはっきり言い切ったのだから

実際横島以前にシロとでさえ魔理は勝負にならないと魔鈴は見ていた

この数ヶ月、横島と雪之丞の影響を一番受けたのはシロなのである

横島やタマモに呆れるほど修行好きだと言われるほどに、シロは店の仕事を熟しながら雪之丞の修行にも付き合っていたのだ

実際シロと魔理の手合わせですら無謀なのだから、魔理が己の実力を悟るにはちょうどいい相手だと魔鈴も考えたらしい



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