終わりと始まり

「そうか…」

少し驚いた雪之丞だが、別に反対する理由も無いため納得する


「タマモちゃんの件は私がやっとくわ。 一応、私も保障人を続けるから」

「すいませんが、お願いします」

タマモの保護の件を百合子がやると言ったため、魔鈴は頭を下げてお願いした


「じゃあ俺は免許返す前に妙神山に行ってくる。 GS免許は小竜姫様に取らせて貰ったもんだし…」

話が一通りまとまったとこで、百合子と大樹は夜にまた来ると言い残して魔鈴の家を後にする



「横島さん、妙神山に行くなら少し待って下さい。 お土産にケーキを焼きますから」

横島もすぐに妙神山に行こうとしたのだが、魔鈴としては手土産も持たずに行かせるのは出来なかった

横島と妙神山の親密な関係は知ってはいるが、それでも普通に気持ちだけでも手土産を持たせるのは常識と言っていいだろう

その辺、魔鈴は非常に常識的な人である


それからケーキが焼けるまで2時間ほど待ち、横島は一人妙神山に向かった

魔鈴はいつも通り店を開店させ、タマモは店の手伝いをする

雪之丞とシロは何やら修行すると言い出して、異界の広い敷地で格闘をしている



そして横島は文珠の転移で妙神山に到着していた

(うーん、小竜姫様には美神さんのとこ辞めたことも話さないとダメだしな… なんて言おうか)

令子の事務所を辞めたことや、魔鈴のことなど免許以外にも話さなければならないことがたくさんある

横島は何を何処まで話すか迷っていた


「…横島さん? どうしました、門の前で考え込むなんて…」

横島を現実に引き戻したのは、中から現れた小竜姫であった

鬼門がすぐに横島が来たことを伝えたらしく、迎えに出て来たのである


「あっ! 小竜姫様、今日はいろいろ話さなきゃならないことがあって…」

考えが纏まってないうちに声をかけられたため、少し困ったように話す横島


「とりあえず、中に入って下さい」

横島の話が気になる小竜姫だが、実はある程度予測は出来ていた


(ようやく話してくれるんでしょうかね)

令子との確執や魔鈴との関係など、たまにヒャクメと一緒に横島を覗いていた小竜姫はある程度知っている

打ち明けて相談してくれなかったことを寂しく感じつつも、横島の行動を見守っていたのだ


「これお土産っす!」

「ありがとうございます。 でも、そんなに気を使わなくていいですよ」

忘れないうちに手土産のケーキを渡す横島に、小竜姫は笑顔で答える


「あー、これはその… 長くなるんで後で一緒に説明します」

魔鈴が持たせてくれたと言いたいのだが、その前に魔鈴のことを説明しないといけない

横島はとりあえず小竜姫に案内されるまま、妙神山の母屋に入っていく


「横島~ 久しぶりでちゅ! 来るのが遅いでちゅ!」

母屋の中にはパピリオが居た

正月以来、約二ヶ月ぶりの再開をパピリオは横島に甘えるように喜ぶ


「パピリオも一緒に聞いてくれ。 いろいろ話さなきゃならないことがあるんでな」

甘えるパピリオの頭を撫でつつ、横島は居間に座る


「なんでちゅか…?」

不思議そうに首を傾げるパピリオとお茶を持って来た小竜姫が座るのを待ち、横島はゆっくりと語りだしていく

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