ゆく年くる年

それから数日後、日々秋が深まる中で魔法料理魔鈴もまた変わっていた

夏は冷たい料理や涼しさを感じる料理を増やしていたが、これから晩秋や冬に向かう現在は暖かいメニューを増やしている

無論一年を通して変わらぬメニューも多いが、季節によって微妙に味に変化を加えたり使用する食材を変えたりはしていた

魔法料理魔鈴は基本的には欧風の多国籍料理が基本だが、別に国にこだわりがある訳でもない

特に野菜などは国産の野菜が多く、割と日本人に馴染み深い野菜が多いのだ

本格的なフレンチやイタリアンでは本場の野菜などを使用する店もあるが、魔鈴は季節ごとに旬の野菜や食材を使用することが基本だった



「美味しそうなきのこですね」

そしてこの日の魔法料理魔鈴には、人狼の里よりきのこが大量に持ち込まれていた


「先日は本当にありがとうございました。 まさかあれほど安くなるとは……」

持ち込まれたきのこは人狼の里近辺で採れた物らしく、先日の冬支度のお礼らしい

それというのも魔鈴が仕入れた食料品の値段が、例年よりかなり安く仕入れた為に人狼達を驚かせていたのだ

まあ基本的に卸値価格で仕入れたので当然安くはなっていたが、中には在庫として余っていた食料品も購入した為にかなり安く仕入れていた

様々な理由で在庫になっていた食料品だが、別に味に問題がある訳でもなく賞味期限が過ぎてる訳でもない

少なくとも来年の春までは余裕で保存が効く物でも売れ残りとして在庫になる食料品もある

そんな食料品を魔鈴は積極的に買っていたのだ

基本的には店の出入りの業者に頼んだのだが過去に一度除霊で協力したことがあり、かなり安い食料品を探してくれたようだった


「私の仕事上お店よりも安く買えるので、あの程度でしたらいつでも大丈夫ですよ」

現金収入に乏しい人狼達は本当に助かったらしく、きのこと一緒に長老からはお礼の手紙まで届いていた

魔鈴は返事の手紙をきのこを持って来た人狼達に託し、自身は大量のきのこの調理法を考える


「天然物のきのこは東京では高くてなかなか手に入りませんからね。 どうやって食べましょうか?」

「俺は炊き込みご飯がいいな」

「拙者はお肉と一緒に食べたいでござる!」

「鍋なんていいんじゃない?」


貰ったきのこを前にどうやって食べるか相談する魔鈴と横島達だが、シロは慣れしたしんだ里の味覚に嬉しそうだしタマモもまた自然のきのこが好きらしい

四人はそのままメニューを相談しながら調理を始めるが、魔鈴はこの時一つのアイデアが浮かんでいた


「ねえシロちゃん。 人狼の里ではきのこはたくさん採れるの?」

「もちろんでござるよ。 獲物と違って安定してるでござる」

シロから人狼の里の事情を聞いた魔鈴はしばし考えながら調理を進める

その後しばらくは何故か無言の魔鈴に横島やシロは不思議そうであった


「人狼の里のきのこをメニューに加えましょう!」

無言だった魔鈴が突然笑顔になり口にしたその言葉に、横島達は驚き見つめるしか出来ない


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