ゆく年くる年

同じ頃、令子の元にもザンス国王歓迎パーティーへの出席依頼が舞い込んでいた

元々二年前のザンス国王来日の際の事件解決の立役者なのだから、当然令子にも歓迎パーティーへの出席依頼が来ている

ましてアシュタロス戦の英雄になっている令子には是が非でも出席して貰わねばならない

横島の場合は最悪名前だけでもよかったが、令子は出席して貰わねば困るのだ


「お引き受けしますわ」

令子への交渉に出向いたのはアシモト元首相の秘書だった

二年前総理だったアシモトはすでに総理を退いているが、それでも政界の実力者であることに変わりはない

当時ザンス絡みの事件の隠蔽や裏工作などで令子と直接交渉したのは、他でもないアシモト元首相自身だったのだ

令子自身も事件に絡む犯罪の揉み消しと脱税を申告漏れにするなど恩恵を受けている

これは元々キャラット王女の犯罪揉み消しなど複雑な裏側があり、令子は辻つま合わせの為に政府とザンス王家に事前に調査を頼まれていたGSだったという偽の筋書が公式見解になっていた

結果オカルトGメンと警察が恥を晒した形にはなったが、政府としては一応の面目は立ったしザンス王女の犯罪隠蔽にも成功した経緯がある

そんな訳で今回令子の元にはアシモト元首相の秘書が歓迎パーティーの出席の打診に来たが、これを断れないのは令子も当然自覚していた


「ありがとうございます。 先生も安堵されることでしょう」

「おキヌちゃんには私から話すわ」

秘書との会話は淡々としてスムーズなものだった

令子はやはり美神令子でなければならないし、政治家の秘書に弱みなど見せれるはずがない

結局令子とおキヌもまた歓迎パーティーに出席することで話が進んでいく


「全く……」

そんなアシモト元首相の秘書が帰ると、令子は途端に面倒そうな表情を全開にする

先程は快く引き受けたが、本心ではそんな面倒事は御免だと言うのが本音なのだ

だがいくら令子でも元首相を敵に回せるはずもなく、パーティーの出席程度ならば受けざるおえなかった


「あそこと関わるとろくなことないのよね」

正直令子もまたザンス王家にいいイメージがない

馬鹿でかい精霊石を貰い事件後も脱税の隠蔽などに口利きをしてくれたザンス王家だったが、そもそも関わらなければ一番よかったとの思いが強いのである

あれ以来アシモト首相と親交を得たのは悪いことではなかったが、代わりに今回のような断れない話も来るのだ

はっきり言えばザンス王国に関わりたくないのだった


「横島クンは来ないんでしょうね」

あの事件で同じくザンス勲章を貰ったのはおキヌと横島と西条だったが、令子の保護下にあるおキヌとオカルトGメンの西条は拒否出来ない立場である

結果的にGSを辞めた横島ならば断れるため、令子は自由な横島が少し羨ましく感じてしまう

実際には横島もまた断れない立場に追い込まれたのだが、令子は政府がそこまでこの件に力を入れてるとは思わなかったようだった



6/100ページ
スキ