ゆく年くる年

一方秋が深まる頃の六道女学院霊能科は、完全に卒業後を見据えた時期になっている

以前にも説明したが、霊能科とはいえ三年になるとGS専攻と進学と就職にそれぞれ分かれていた

一番気楽なのは就職組だがこちらは一番数が少なく、家業の神社や寺を継ぐなどの理由がある者が多い

次に多いのがGS専攻で、一番人数が多いのが進学組である

進学組の大半は系列の六道大学に進学するので比較的余裕があるが、外部の大学に進学する者は受験勉強に励んでいた


そしてGS専攻組だが、こちらは全体的にピリピリした空気の毎日を送っている

この時期までGS専攻を続ける者は優秀な者が多いが、それでも卒業後にGS試験に合格するのは半数にも満たない

しかもGS専攻の大半が霊能を家業にしてる者が多く、他の道へ進みたくて進めない者も多いのだ


(なんだかなぁ……)

そしてこの時期のクラスの空気にあまり馴染めなかったのはおキヌである

この時期になるとクラスメートがライバルであり全体的にピリピリした空気の中で競うことや駆け引きをする者が多いが、おキヌは相変わらずその手の事が苦手なのだ

しかもおキヌ自身はネクロマンサーの能力のおかげでGS試験も合格確実と言われており、やっかみ半分な態度で接して来る者も少なからず存在した

弓かおりや一文字魔理の存在もあり孤立とまでは行かないが、正直おキヌには向かない雰囲気の毎日である


「おキヌちゃんどうかしのか?」

「ううん、別に。 ただみんな頑張ってるなって……」

この日おキヌは魔理と一緒に帰っていたが、思わずため息をつくおキヌを魔理は心配そうに見ていた

正直魔理もおキヌがGS専攻クラスが合わないのを理解しており、親身になって話を聞く機会が増えている


「確かに専攻組はGS独特の世界なんだよな。 秘密主義っていうか孤立主義っていうか……」

おキヌが合わないGS専攻クラスは当然魔理も合わなかったが、中学時代から割と孤立する機会が多かった魔理は逆に楽な部分もあった

オカルト業界独特の空気やプライドを持った生徒は、魔理のような異端な者にあまり関わらなかったのである

かおりとも親しい魔理は孤立もすることはなく同時に干渉もされない為、合わないが案外過ごしやすい状況でもあった


「私にはよく分からないの。 美神さんも唐巣神父もエミさんもみんな違ったから……」

おキヌの知るGS達と専攻組のGS達は明らかに違う存在だった

日頃はいがみ合うことなどあっても協力する時はするし口論はしても内心では相手を認め尊重しているのだから、おキヌはGS専攻組のようなGS達を知らないのだ


「おキヌちゃんの知り合いはみんな別格だからな」

おキヌの言葉に魔理は春の横島達の卒業パーティーを思い出す

横島を抜きにしてもあんな失礼なことをした魔理に対してきちんと話を聞いて真実を教えてくれた唐巣を、魔理は心から尊敬している

他のエミにしろ令子にしろ、一般的なGSから見れば雲の上の存在なのだ

ある意味令子に守られてるおキヌが知らないGSの世界が学校では垣間見えるのだから、おキヌが困惑するのは当然だった

おキヌ自身もGSを目指してネクロマンサー以外を学び修行していたが、クラスの雰囲気にはやはり馴染めないようである



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