ゆく年くる年

そのまま横島達は魔鈴の魔法で次々に人狼の里に荷物を送っていくが、中身が少々偏り野菜は少ない

基本的に春まで長期保存出来る物が中心なため、どうしても野菜が少なくなるらしい

まあそれでも漬物など工夫をして栄養は偏らないようにしてるらしいが……


「そういえば野菜を育てる魔法ってありますよね。 魔鈴さんは使えるんっすか?」

野菜の話を少ししていた横島と魔鈴だったが、横島はふと以前見た野菜を育てる魔法を思い出し魔鈴に尋ねる

すっかり忘れていたが、あの魔法は魔鈴の魔法に近いような気がしたのだ


「野菜を育てる魔法ですか? 確かに使えますよ。 あれは中世以前から現代に残る数少ない魔法ですから」

突然野菜を育てる魔法の話をした横島を魔鈴は若干不思議そうに見つめるが、魔鈴はその手の魔法が一番得意なようである

令子とは対照的に白魔法を得意とする魔鈴は、ヒーリングや命を育てる魔鈴は得意中の得意だった


「ただあの魔法は現代に伝わってはいますが、使い手は少ないようですよ。 上手く使えば便利な魔法なんですが、今は大量生産の時代ですから」

魔法で一瞬にして植物を育てる魔法は、現代では使う者がいないらしい

あの魔法は便利なのだが、対象範囲が狭いのが難点だったのだ

種一つごとに魔法を使わねばならず、技術対費用の効果が悪いらしい

オカルト研究者やヒーリングなどが得意な者が習得してることはあるが、実用的でないため現代で使う者はほとんど居ないのが実態だった


「だいぶ前に神父が倒れた時に、美神さんのアイデアで魔法で野菜を育てようとしたんっすけど失敗したんですよね」

魔鈴の説明に思い出したかのように昔の話を語る横島だったが、魔鈴は苦笑いを浮かべて聞いている

向き不向き以前に魔法とはデリケートで難しい物なのだ

過去歴史上においても魔法による食料増産で飢饉などに対策しようとした霊能者は数知れないが、実際に効果を上げた者はほとんど居ない

そもそも植物を育てる魔法は、魔鈴の魔法と違い現代にも正式に残る魔法なだけに習得は出来るが基本的に実用的でない魔法が多いのだ


「これは私の個人的な意見ですが、自然の理を無理に変える魔法はあまりよくないと思うんです。 あの魔法は地中の栄養素を瞬時に吸い上げてしまいますし、大地の霊力も結構消費します。 一回や二回ならばいいのでしょうが、多用すれば必ず歪みがでるんです」

過去の失敗を半ば笑い話として語る横島に、魔鈴は植物を育てる魔法の欠点を語る

元々は魔法の研究者であった魔鈴は、魔法の復元だけではなく既存の魔法やオカルト技術の勉強や検証も行っていた

植物を育てる魔法の欠点についてはだいぶ前に研究がされており、その情報は研究者の間では有名な話らしい

仮に魔法で大規模に農園を作るとしても、地力の回復に時間がかかり連作は不可能だとの研究結果が存在する

それでも強行すると砂漠化などの問題が起きるらしい


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