それぞれの想い

横島が次に顔を出したのは、雪之丞達のテーブルだった


「弓さんに一文字さんも久しぶりだね。 ゆっくりして行ってよ」

何やら微妙な空気を感じつつ、かおりと魔理に軽い調子で声をかける横島

一方声をかけられた二人は微妙な表情で、そんな横島を探るように見ている


「一つお聞きしてよろしいですか?」

横島の問い掛けに答えずに、逆に質問を投げかけたのはかおりだ

(このタイミングを逃せば、本人に聞くタイミングは無いでしょう。 この際直接聞くことも必要ですわ)

おキヌを苦しめてる張本人なのにまるで理解してない様子で、ヘラヘラと軽い調子で自分達に声をかけたのがかおりは気に入らない

そんな横島がどんな言い訳をするのか、是非聞いてみたかった

かおりの中では、やはり横島を見下しており、あんなに苦しむおキヌを放置して自分は楽しんでる横島が許せない


「んっ、なに?」

「何故、美神お姉さまの事務所とGSを辞めたのですか?」

軽い調子で答えた横島だったが、まるで罪人を問いただすような感じで話すかおりの質問に、一瞬表情が変わる


「弓、止めろ!」

とっさに雪之丞が止めるが素直に聞くかおりでは無く、横島に答えを求めるように睨みつけていく


「理由はいろいろあるけど、簡単に言えば自分の人生を見つけたんだろうな」

少しの沈黙の末に、横島は言葉を選びながら答えた

表情は笑顔を作ってはいるが、先程までの軽い調子は消えている

かおりや魔理は初めてみるような影のある表情だった


「私が聞いているのはその内容です!」

自分の知らない横島の表情にかおりは少し戸惑うが、そんな表向きの答えを聞きたい訳では無かった


「お前いい加減に……」

キレそうになる雪之丞を少し苦笑いを浮かべて止める横島は、少し困ったような表情でかおりを見る


「弓さん、何が知りたいんだ? 弓さんはおキヌちゃんの友達だ。 知りたいことはおキヌちゃんに聞けばいい。 きっとそれが君の求める答えなんだからさ」

横島はかおりの聞きたいことをうっすらと感じ初めていた

事務所を辞めた後のおキヌを横島は知らないが、彼女の性格からしてショックは受けているだろう

この二人が聞きたいのはその理由なのだと、気付き初めている


「なっ… 私はあなたに聞いているのです! 氷室さんはあなたを庇って何も言いません!!」

横島の言葉はかおりの感情を逆なでするものだった


「おキヌちゃんは何も言わなかったのか……」

横島は困ったように言葉に詰まってしまう


「氷室さんはあなたのせいで苦しんでます! あんなに優しい氷室さんと、素晴らしい美神お姉さまの事務所を辞めたのですから、当然非はあなたにあるはずです!!」

横島の態度や言葉に怒りのボルテージが上がったかおりは、感情に任せて横島に怒りをぶつけていた

その言葉からは横島を見下して、馬鹿にしていることがまるわかりである


そんな横島を怒鳴るかおりの言葉に、店内のメンバーは静まり返って横島とかおりを見つめていた


「君がそう思うなら、それが真実なんだと思う。 事実、俺のセクハラなんかの行動は美神さんやおキヌちゃんにたくさん迷惑をかけたしな」

あっさり自分が悪いと認めた横島にかおりと魔理は驚き目を見開く


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