ゆく年くる年

「世間知らずな忠夫一人だと何をやらかすやら…… 流石に親同伴という訳にはいかないからね」

固まる魔鈴に百合子も流石に申し訳なさそうな表情を見せるが、他に方法が無かったのも事実だった

まあ令子達が来なければ横島一人でも大丈夫な気もするが、横島と令子を合わせるのは危険だと百合子や大樹は判断していたのである


「ダメかしら?」

「……分かりました。 私が一緒に行きます」

一応断ることも可能な段階なので最終確認をする百合子に、魔鈴はしばし考え込み行く決断をした

正直魔鈴は戸惑いも大きいのだが、横島一人で公式の場に出すのが危ういのは理解している

それに横島に勲章があり出席のお願いが来るということは令子も必ず来るという証であった


(美神さんとおキヌちゃんの近くなのでしょうね)

恐らく令子やおキヌの近くの席だろうと考えると、魔鈴は自分が行かねば万が一の場合に大変なことになると理解している

そもそも爆弾を抱えてるのは横島だけではない

令子やおキヌも恐らく大なり小なり爆弾を抱えていると魔鈴は気付いていたのだから


「魔鈴さん、俺行くなんて行ってないんだけど……」

「あんたねぇ、国に逆らっていいことあると思うのかい?」

魔鈴が出席を即決する中、横島は自分が置き去りで出席の方向で進む話に抵抗を見せる

しかし百合子は横島を威圧するように睨むと、行かないと面倒なことになると半ば脅しのようなことを口にした


「だけどさ、俺一人が行っても行かなくても大差ないだろ」

「ザンス勲章は横島さんが考えてるよりも遥かに重いのですよ。 日本人で数人しかいないザンス王家との面識がある勲章所持者が居ないとなれば、政府の姿勢を疑われ兼ねません。 その来日が成功したならいいのですが、仮に失敗したらあちこちから恨みを買いますよ」

百合子があまり詳しく説明しない為に魔鈴が代わりに説明するが、妙な疑いや恨みを残す欠席よりは出席して大人しくしてるのが一番だと横島に説明していく

横島自身は何故自分がそんな立場なのか納得がいかない様子ではあるが、だからと言って絶対行かないと意地を張るほどの覚悟はない

相手が百合子一人ならば横島はもっと反発するのだろうが、訳や行かない場合の不利益を淡々と説明する魔鈴には勝てるはずがなかった


「最低限の挨拶とテーブルマナーさえ出来ればいいわよ。 二人は出席するだけでいいんだから」

結局気が重いというか面倒だと感じる横島だが、渋々行くことを承諾する

完全に納得した訳ではないようだが、面倒事が増えるのはやはり嫌なようだ


(私も自信ないんですよね……)

百合子は出席するだけだと簡単に言うが、横島のみならず魔鈴も不安な部分が多かった

元々研究者である魔鈴だが、正直この手の付き合いに参加した経験はあまりない

イギリス時代に魔法の復元を公表した直後にはあちこちからパーティーや講演の依頼が来たが、ほとんど全てを断った過去がある

まあ当時は研究に集中したいからと理由を付けて断っていたが、カトリックの影響が強いヨーロッパで魔女の技を復元したというのはいろいろと面倒なことも事実だったが……



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