秋の夜長に……

さて魔法料理魔鈴のハロウィンだが、大きな成果はないが成功はしていた

最終的には週末の三日間で数十組の親子連れが来店して、概ね好評だったことは確かである

ただ売り上げにあまり変化はなく、短期的に見ると企画に時間をかけた割には成果がパッとしないことも確かだ

まあこの辺りは今までの取り組みと同じく今後に繋がる新たな客層を開拓したばかりだと考えると、それはそれで満足のいく成果にも思える


「あのカボチャ頭の妖怪何者だろうな。 お菓子あげたら泣いて喜んでたが……」

「本物のジャックランタンでしょうか?」

期間中は特にトラブルらしいトラブルは起きなかったが、唯一驚いたのは妙な妖怪が来たことか

基本的に普通に食事をしたので特に指摘もしなかったが、本物のジャックランタンっぽい妖怪だったのだ

ちょうど忙しく魔鈴は見れなかったので本物かどうかは分からないが、最後にサプライズでお菓子を上げると泣いて喜んで帰ったのである


「妖怪はたまに来てるでござるよ。 あの御仁は初めてでござったが」

ジャックランタンっぽい妖怪を見たのは横島とシロだけだったのだが、シロは横島と魔鈴の会話に何気なく横島が驚くような事実を口にする


「他にも妖怪が来てたのか?」

「たまに来てるでござるよ。 先生は気付いてなかったんでござるか?」

一人だけ驚く横島にシロは不思議そうに答えるが、実はシロが働くようになってから正体を隠した妖怪が客として来ることが若干増えていたのだ

元々人に正体がばれにくい妖怪は街中にもおり、普通に人に混じって生活してるがシロが働いて以来魔鈴の店は妖怪に寛容だとの噂が広がったらしく人外の客が少しずつ増えていた


「あんただけよ気付いてなかったの」

「普通にお客様として来る場合は特に詮索はしませんからね」

驚く横島に対してタマモと魔鈴もある程度気付いていたらしく、二人もむしろ横島が気付いてなかったことに驚いている

特に魔鈴は一人で働いていた時代から何人か妖怪が来ていたのに気付いているが、知らぬふりをして対応していたのだ

わざわざ指摘したり尋ねたりすることではないし、普通に客として来る以上何も問題はなかった


「へ~、そりゃ知らなかったな~」

一方基本的に相手が人か人外かを全く気にしない横島は、この件に関しては周りがビックリするほど鈍感だった

元々霊視は得意ではないし、何より敵意がない相手に対しては本当に霊能者か疑いたくなるほど鈍いのだ

まあ横島は過去の経験から見ず知らずの他人よりは妖怪に好意的なことも多い訳だし……


「話してくれりゃあ、なんか協力出来る気もするけどな」

「誰も何も望んでないわよ。 みんなそっとしておいてくれるのが一番なの」

予想以上に身の回りに妖怪が居ると知った横島は興味を持つが、そんな横島にタマモは釘を刺すように妖怪達はそっとしておいて欲しいと本音を教える

そんな二人のやり取りに魔鈴は人間と妖怪の難しさを知る故に無言を貫くが、横島は少し納得がいかない様子でもあった



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