秋の夜長に……

「その件は私達で説得するわ。 迂闊に勲章なんて貰ったあの子が悪いんだし」

「忠夫をそんな場所に出して大丈夫か?」

困った様子の昔馴染みに百合子は横島を出席させることを約束するが、大樹は世間知らずな横島を公式の場に出すのが不安なようだ


「やっぱり一人はまずいわよね」

恐らく令子や西条も出席するパーティーなだけに、横島を一人で行かせるにはイマイチ不安が残る


「もう一人加えてもらえないかしら? 忠夫をコントロール出来る子を一緒に行かせるから」

「もう一人? こちらとしては来てくれるんだったら構わないが……」

百合子達の不安げな表情に昔馴染みも少し不安そうだが、横島にはコントロールする人が必要だと言われるともう一人増やすくらいは簡単だった

とにかく出来るだけ大人しく普通にパーティーを終わらせたいのである

まあ百合子と大樹にしても世話になってるだけに昔馴染みの頼みは断りにくく、なんとかするしかない状況だった


「それにしても優秀過ぎる息子を持つのも大変そうだな。 神族の庇護が無ければ、今頃大変なことになってた気もするよ」

横島の出席が事実上決まり昔馴染みはホッとしたのか、横島の立場の難しさを理解し苦笑い浮かべる

経歴だけで見れば横島は決して令子に負けてない

まあ元々は大半が令子の元での見習いだったので評価が難しかったのだが、アシュタロス戦と今年始めの飛行機の事件が横島の評価を無用なほど高めてしまったのだ

特に今年の飛行機の件が余計だったのはアシュタロス戦での活躍をまぐれや成り行きだと考えてた多くの人間に、まぐれでないとの印象を与える結果になっていたのがまずかった

そんな横島がオカルトと決別して自由に生きるには、それ相応の後ろ盾が必要なのである


「忠夫君に関しては、アメリカが身辺調査したって情報もあるしな。 その後ろ盾の神族にはよく頼んでおいた方がいいぞ」

狙いが何なのかは不明だが、横島があちこちから密かに注目を集めてることは確かなようだ

実際小竜姫に何が出来るのかと聞かれると小竜姫本人も困るのだろうが、名前だけでも絶大な影響力があった

人界の土着の神ならばともかく、神界出身の小竜姫は制約も多いが影響力も多いようである


「私達も会ったことないのよ。 それに忠夫はその話多分知らないし。 まあよく遊びに行ってるみたいだけど……」

多くの人間が横島の扱いを悩む原因である小竜姫に対し、横島本人は何も知らずに友達感覚だと告げると昔馴染みは言葉を失ったように唖然としてしまう

それだけ神族に気に入られたとも言えるが、一歩間違えれば世界に多大な影響を与えることも可能性としてはあるように思えるのだから


「まあパーティーは余計なことしないで大人しくしてるように、よく言っておくから大丈夫よ」

いろいろと不安になる昔馴染みに、百合子は問題を起こさないようによく言っておくと告げてこの日の話は終わっていた

まあ百合子としては横島一人だと不安なので魔鈴を一緒に行かせようと考えたのだろうが



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