秋の夜長に……

それからもハロウィンの準備は着々と進み、十月も下旬に差し掛かる頃

魔法料理魔鈴ではハロウィンウイークということで、一週間限定で子供連れの客に専用のメニューの販売を開始していた

小さい子供が好みの味付けのメニューを新たに用意しており、更にサプライズで会計時には手作りお菓子の小さな詰め合わせをプレゼントするという企画である

元々リーズナブルな値段にも関わらずお菓子を付けた結果、利益が全くない企画になったが魔鈴は全く気にする様子もなく企画を認めていた

まあ中途半端にやるよりはサービス企画だと割り切った方がいいと判断したようだが、今年の春以来売り上げは順調に伸びており今回程度の企画ならば全体では赤字にはならないのも大きいのかもしれない


そんなハロウィンの企画だが、当初はそれほど客層に変化が無かった

まあ宣伝も店の表に貼紙しているだけだし、何より平日はあまり親子でレストランで外食はしないのだろう

そんな流れが変化したのは週末の金曜日のことである

夕方くらいから突然親子連れの客が増えて行き、いつもはほとんど居ない親子の客が目立つようになったのだ

しかも新規の親子連れの大半は弁当や以前に参加した商店街の祭りの時の屋台など、今年の春以降の新たな取り組みにより一度は店の味を食べた人がほとんどであった

まあ横島はそれほど深く考えてはなかったのかもしれないが、結果だけを見ると横島達が来て以来の様々な働きの成果が出ていたというところだろう



一方のGSとしての活動だが、一人で仕事を熟すことになった雪之丞は無難に依頼を解決していた

魔鈴と比べればコミュニケーションに難があり魔鈴ほど愛想がよくないのがあるが、依頼人への対応も合格点のラインには到達している

元々魔鈴の受ける依頼は難易度が低い依頼ばかりであり、最低限の知識とコミュニケーション能力さえあれば問題がないのだ

言葉遣いと愛想には問題はあるが見た目の割に親切な人だとの感想が魔鈴に届いてることから、目つきが悪い見た目が逆に得をした結果になっている

そんな雪之丞の独り立ちにより魔鈴の負担は確実に軽くなっており、魔鈴は雪之丞と合いそうな依頼を少しずつ任せることにしていた

雪之丞の場合は除霊というより依頼人との対話や関係構築の経験が必要なのだ

メドーサと関わって以来裏の世界を中心に生きて来た雪之丞に欠けてるのは、人とのコミュニケーションなのだから

横島に負けず劣らずアンバランスな雪之丞には、一般的な人間関係の経験が必要不可欠であった


ただ実のところそこまで細かな部分を気にするのは、魔鈴だからとも言える

最近の一般的なGSの師弟関係で、そこまで気にするのはあまり多くない

確かに人間関係は大切だが一度依頼を受けた相手から早々何度も依頼を受けることはないのが普通だし、細かな対応などよりは実力優先的な価値観が多いのだ

結果論にはなるが独自の価値観を持つ魔鈴は、雪之丞に多大な影響を与えることになる



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