秋の夜長に……

慰霊祭会場は多くの人が集まり、独特の重苦しい空気が支配していた

犠牲者の遺族にとっては二年の月日が過ぎても過去の出来事には出来るはずもない

悲しみと後悔などが渦巻く会場は、真実を知る者にとって心地好い場所であるはずがなかった


そんな会場でオカルトGメンとGS協会は当然近くの席を割り当てられている

GS協会も会長以下幹部が勢揃いしており、美智恵と西条と他に見習いが三名のオカルトGメンとは規模が違っていた

そんな中でもオカルトGメンの美智恵と西条、GSの令子と唐巣とエミと冥子はアシュタロス戦で活躍した者達としと特に注目を集めてる

しかし注目を集めている彼らはほとんど会話もないまま、会場と同じく重苦しい空気が支配していた


(茶番ね……)

美智恵と冥子を除いて険しい表情を見せるGS達の中で、エミはこの場所に居る苦痛を愚痴りたくなる思いだった

正直エミとしては慰霊祭に参加などしたくなかったが、GS事務所を構えている以上欠席は出来ないのが実情である

横島を失いひのめの世話などで仕事が減っている令子に変わり、今年はエミが業界トップになるのはほぼ確実なのだ

そんなエミが慰霊祭を欠席すれば何を言われるかわからない

レストランが本業の魔鈴や世捨て人のようなカオスとは立場が違うのだから

横島の活躍という隠された真実を知る者からは胡散臭いような目で見られるし、何も知らない者からは無用なほど羨望の眼差しを向けられる現状はエミにとってとばっちりもいいところなのだが……


(まあ、私はまだマシなワケ)

思わずため息が出そうになるエミだったが、反面で業界関係者からの視線はさほど厳しくない

横島と令子の対立は真実を知るオカルト業界関係者では有名なのだが、エミは何故か横島側の立場だと受け取られていたからだ

これには雪之丞のGS試験時に横島達とエミが一緒だったことが関係している

横島がGSを辞めて美神家と関係を断った後にエミとの交遊が続いていたことで、エミは美神家の陰謀には無関係だと考えられていた

そもそもアシュタロス戦で横島の活躍を隠した訳やその後の横島と令子の決別に関しても、事情を知る業界関係者の中でさえもまた解釈や知る事実が微妙に異なっている

真実をよく知らない関係者が一番理由として考えてるのは金銭と名誉の問題であり、横島がGSを辞めた理由もGS業界に失望したからだと考える者も多かったのだ

令子とアシュタロスの関わりは全くと言っていいほど伝わってなく、横島とルシオラの関係もあまり伝わってない

中途半端な噂や真実ばかりが業界に流れたことで、美神家は弟子の功績を横取りしたとの噂が一番広がっていたのである

何かと黒い噂の多かった令子だけに、本当の真実よりも噂の方が真実味を増してしまったのだ

結果的に自称事情通などの業界関係者から流れた、美神家のよくない噂は静かに広まっていた

馬鹿がつくほど真面目な唐巣や六道家の娘であり陰謀になど加担しそうもない冥子に加えてエミまでも潔白だとなると、業界関係者の美神家への風当たりは強くなる

業界関係者のエミへの見方は、美神家に利用されたのを逆手に取ったしたたかな女との印象が強かった



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