それぞれの想い

魔鈴の誘いに簡単に乗ったかおりを見て、魔理は驚き止めようとする


「弓、まずいよ。 おキヌちゃんが居ないのに私達だけ行く訳にいかないだろ?」

「ですが、こんなチャンスめったにないですわ! ここなら真相が掴めるはずです」

目の前でコソコソと相談するかおりと魔理を、魔鈴はしばし無言で見つめていた


(本当にケンカでもしてるようですね。 まあ、皆さん若いですからね…)

まだ幼さも残る二人を見て魔鈴は少しため息をはく

あまり考えないようにしていたが、横島と魔鈴は結構年が離れているのだ

横島や雪之丞とはあまり感じないが、かおりや魔理を見ていると思わず年の差を感じてしまう


(横島さんや雪之丞さんは年の割には苦労が多いですから、大人びてるのでしょうね)

魔鈴がそんなことを考えてる間も二人はコソコソと相談をしており、しばらくしてようやく結論が出たようで二人は魔鈴の店に行くことに決めたようだ

何やらやる気を満々に見えるかおりと少し不安にも見える魔理、結局はかおりが押し切ったようである


魔鈴が店内に戻ると、みんなそれぞれに食事や酒を楽しんで賑やかであった

「雪之丞さんとタイガーさんはあちらです。 食事と飲み物はセルフのバイキングですので御自由にどうぞ」

魔鈴は一通り説明して厨房に戻ろうとする


「あの料金はいくらですか?」

「今日は料金は頂いてません。 横島さんの親しい方の集まりですからね。 ホームパーティーだと思って頂ければ結構です」

手持ちの少ない魔理は、店内の料理を見て料金が気になったようである

魔鈴はそんな魔理に笑顔で説明して厨房に戻っていく


「なあ弓、ホームパーティーってこんなに豪華なのか?」

ホームパーティーと言われたが日本では比較的珍しい

まして一般家庭の魔理には経験が無いので、20種類以上ある料理やその場の雰囲気に完全に飲まれていた


「私に聞かないで下さい。 私の家が寺なのは知ってるでしょう。 こんな西洋式の集まりの経験は無いです!」

一方、かおりも同じくその場の雰囲気に飲まれている

寺では冠婚葬祭や地域の集まりはあるものの、基本的に御膳だしバイキングとかは有り得ない


そんな二人だが、いつまでも入口で立っている訳にもいかないため、雪之丞やタイガーと同じテーブルの席に座る

だが、かおりと雪之丞は互いに顔を見るが何も話さない


「魔理さん、こんなとこで何してたんですケン?」

「いや、弓と街をぶらついていた帰りなんだ」

不思議そうに事情を尋ねるタイガーを魔理は適当な嘘でごまかすが、タイガーは不思議そうな表情のままだ


(魔理さん、なんで嘘をつくんですかいノー)

先程ヒャクメにより二人が店の中の様子を見ていたのは知っているタイガーは、何故魔理が嘘をつくのか気になって仕方ない

だが元々気が弱いタイガーには、そこを問い詰めることも出来なかった


重い空気を変えるようにかおりと魔理は料理や飲み物を取りに席を立つ

そして同じ席に座っていたカオスとマリアの二人は気を効かせたのか逃げたのかわからないが、いつの間にか小竜姫達のテーブルに座っていた
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