秋の夜長に……

そんな魔鈴の話に雪之丞はすぐに答えが出なかったが、自分がよりGSに近付いてることだけは感じていた

無論現状のままでは事務所を経営するのはとても無理だが、実は雪之丞は独立したいとの考えはあまり持ってない

基本的に一流のGSに成りたいとの想いは強いが、一流=独立との方程式を雪之丞は考えて無かったのだ

まあ将来的には独立も悪くないとは考えてるが、エミや唐巣との関わりからGS事務所の経営が予想以上に大変な事実を知ってからはそれほど魅力を感じなくなったのが実情である

とりあえず今は納得が行くまで勉強や修行に専念したいのが本音だった

今回魔鈴は雪之丞にゆっくり考えておくように言っただけなので返事は求めなかったが、雪之丞がGSとしてより一歩進んだことだけは確かだろう



一方雪之丞に将来を考えるように告げた魔鈴だが、彼女自身も己の将来を見据え努力を重ねている

以前に小竜姫にアドバイスをして貰った修行は毎日コツコツ継続しているし、魔法の研究も当然継続していた

まあ直接戦闘の修行は本当に短時間の基礎中の基礎なのだが、魔鈴の忙しい生活ではそれが限界でもある

魔鈴の修行相手は基本的にシロとタマモだが、雪之丞も時折参加して賑やかになっていた

正直成果としてはさほどないのが現状だが、魔鈴自身も直接戦闘で一流になれるなど考えてない

万が一の時に横島達の足手まといにならない実力が欲しいだけなのだから


「大丈夫っすか?」

「ええ、大丈夫ですよ」

そんな魔鈴故に寝室に入る頃には疲れてる日もよくある

魔鈴は決して弱音を吐かないが、横島は意外と細かい変化を見抜き魔鈴を心配してしまうのだ


「私ばかりが悪いですよ。 横島さんも疲れてるでしょう?」

「俺はそれほどでもないっすよ」

そしてこの日も魔鈴が疲れてると感じた横島は、申し訳なさそうな魔鈴を半ば強引にベッドに寝かせるとマッサージを始める

いつからか分からないが、横島は魔鈴が疲れてると判断した日にはマッサージをするようになっていた

魔鈴の日常はそれだけハードであり、幽霊時代のおキヌを越えるようなハードな日常に横島は人一倍心配していたのだ


「そこは効きますね……」

時折勘違いされそうな色っぽい声も上げることがある魔鈴だが、マッサージが始まると気持ち良さそうにリラックスしていく

横島は自身が無理をしていた時の経験から、マッサージしながら微弱な霊波を魔鈴に流している

肉体の疲労を回復すると同時に僅かな霊波により霊体と肉体を活性化させてるのだが、これは無茶な修行をしていた頃に自然に身についた技術であり魔鈴も驚くほど高度な技術だった

実は心霊治療の一種だと横島が聞いたのは割と最近である

そんな横島のマッサージは日によって時間が違うが、最終的には魔鈴の疲れがとれるか横島の我慢が限界になると終了だった

微弱な霊波を送りながらマッサージするのに横島が素肌に直接がいいと主張するので、基本的には魔鈴は一糸纏わぬ姿なのである

そんな姿の魔鈴にマッサージをする横島の理性がいつまでも持つ訳がないのは当然だろう

この先は言わなくても理解してるだろうが、何だかんだ言っても二人は助け合って頑張っている



14/41ページ
スキ