秋の夜長に……

横島達が休日を満喫してるこの日の夕方、エミの事務所では学校を終えた小鳩と愛子が事務所に来て掃除や雑務を熟していた

エミの事務所でバイトを始めて以来二人は週末を中心に交互にバイトに来ているが、最近は平日の夕方も事務所の掃除や書類整理などをする日が増えている

仕事内容は変わってなく一般事務程度の物だったが、タイガーが掃除や書類整理など向いてないことから二人が放課後に来る日が増えていたのだ


「タイガー君、洗車終わった? それじゃ次は事務所の周りの掃除をお願いね」

この日エミは仕事で事務所を空けていたが、愛子はタイガーと協力しつつ事務所の掃除をしていた

その間に小鳩はお札などの霊能アイテムの在庫確認や支払いの確認など雑務を続けている

そんな愛子や小鳩が一番大変だったのは除霊料金の支払い確認であった

美神事務所同様に業界トップのエミの事務所もまた動くお金が桁違いである

客の支払い方法も現金即決から長期分割まで様々なのだ

支払い期日にきちんと支払われてるか確認しなくてはならないし、支払いが遅れてる客には別途対応が必要だった


「愛子さん、この人また入金確認出来ませんでしたけど……」

「またなの? 三回目よね。 書類に纏めてエミさんに報告した方がいいわね」

GS事務所で大変なのは何も除霊ばかりではない

高額になる除霊料金の回収はGS事務所にとって死活問題である

支払いの遅延にきちんと連絡をして来る客はまだいいが、中には踏み倒しや夜逃げを狙う客もまた存在していた

二人はそんな悪質な客の情報を纏めエミに報告することが重要な仕事の一つなのだ


「お金に困ってるならせめて相談してくれればいいのに……」

「本当にお金に困ってるかは怪しいけどね。 エミさんの場合支払いに困るような客は来ないから」

支払いに遅れて連絡もしてこない相手に小鳩は困惑気味だが、愛子はただ単に相手がケチなのだろうと考えていた

そんな話に過去の経験から強欲な人をあまり好きではない小鳩は複雑な表情を浮かべるが、愛子は割と気にしないようでそんな人間も居ると割り切ってるらしい

ちなみにエミの事務所では場合によっては保証人を求めたりもしている

相手が馴染みや社会人に信用出来る人ならばともかく、よく知らない相手からの高額依頼はリスクを考えて保証人を求めることも多かった

まあこれはGS事務所では割と一般的な方法であり、無条件で高額依頼を引き受けるGSは滅多に居ない

中途半端な良心を出したGSが、支払いを回収出来ずに逆に借金で自殺したなんて笑えない現実も稀にあるのだ

魔鈴のように常連や知り合いの簡単な依頼を熟すだけのGSは無縁な悩みではあるが


「私には理解出来ませんね…… じゃあ書類に纏めます」

お金絡みの問題に若干空気が重くなる二人だが、小鳩もそれほど悩むことなく仕事に戻っていく

貧乏神の影響で人間の負の部分を多く見て来た小鳩は、見た目以上にタフだった

少なくともよく知りもしない相手に中途半端な情報から同情するほど世間知らずではない

どん底と言える生活を耐え忍んだ小鳩は横島よりも遥かに精神的には強く大人なのかも知れない


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