秋の夜長に……

賑やかで楽しく騒がしい夕食も終わり横島達が後片付けをするからと魔鈴と小竜姫を休ませて皿洗いなどをしてる頃、タマモは老師に部屋の片付けを頼まれていた

部屋にある大量のゲームなどを片付けるように小竜姫から日頃言われてるらしい

横島やシロは部屋の片付けに向かないし魔鈴は休ませたいとのことから老師はタマモに頼んでいたのだが……


「私に何か話でもあるの?」

大量のゲームソフトなどを専用の部屋に片付ける傍らで、タマモはこの片付けが何かしらの意図的な行動だと感じていた

表向きは横島やシロが皿洗いしてる間にタマモが片付けるという形であり不自然さなどないが、小竜姫の視線がほんの僅かに普段と違うことにタマモが気付いていたのだ


「うむ、少し頼みがあってのう」

周りに魔鈴達が居ないゲーム部屋で尋ねたタマモに、老師は一服つけて前置きもなく本題に入る

言わなくても察するタマモなだけに話が早いし、横島達に気付かぬようにあまり長々と話してる暇がない


「わしらと協力して欲しい。 横島の現状が危ういのは理解してるじゃろう。 残念じゃが神魔のわしらでは限界がある」

それは単刀直入と言うにはあまりに突然過ぎる言葉だった

普通なら意味が解らないで当然だが、タマモはいつかこんな日が来る気がしていた


「それは貴方個人の意志? それとも……」

「わしだけでなく小竜姫やワルキューレ達の総意じゃ。 横島に一番近くわしらと連携出来るのは他におらんからのう。 ついでに教えるが上層部も横島の現状を変えることは望んでおらん」

一を聞けば十を知ると言う言葉があるが、この二人の会話は正にその一言に尽きる

互いに言葉や説明は少ないが相手の意図を理解して聞きたいことを話す姿は、間違っても横島には真似出来ないだろう


(やはり横島は守られてたのね)

老師の言葉は横島が小竜姫達から密かに守られてた証となるものだった

タマモも薄々は気付いていたが、横島の周辺は平和過ぎるのだ

両親の尽力もあるのだろうが、文珠という奇跡的な能力を持つ横島に無関心なオカルト業界には違和感がある

誰も横島に手を出さない理由を、手が出せないからではとも考えたことがあった

少なくともGSを辞めたという理由だけで、強欲な人間が横島を放置すると考えるよりはよほど現実的な考えである


「わかったわ。 協力する」

タマモの返答は迷うことなく即決だった

無論タマモは無条件で相手を信じるほどお人よしではないが、ここで老師達を拒絶しても横島にもタマモにも何一つ利点はない

オカルト業界において妙神山の後ろ盾がどれだけ意味があるかタマモはよく理解している

少なくとも横島を狙う馬鹿共の強力な抑止力になることは確かだった


(神界が横島を疎ましく思わないことを願うしかないわね)

別に老師や小竜姫達を疑う訳でないが、神界が横島を疎ましく考える日が来ないことをタマモは願わずには居られなかった

結局タマモは老師から専用の通信鬼を受け取り話は終わる

流石に今は詳しく話してる暇はないし、後は通信鬼によって連絡を取ることになった



11/41ページ
スキ