秋の夜長に……

その後シロと老師の修行は夕食時まで続くことになる

小竜姫と魔鈴は途中で夕食作りに行ってしまい、横島はパピリオに連れ出されてゲームに戻るなどあったがシロは夕食時まで頑張っていた


「美味しそうでござるな~」

シロと老師が母屋に戻って来たのは食事の支度が丁度出来た頃だった

尻尾をブンブンと振りよだれを垂らしそうなほどお腹を空かせたシロは、どうやら野生の勘でご飯だと気付いたらしい


「たくさんありますから、焦らないでも大丈夫ですよ」

シロの様子に思わず笑みを浮かべる小竜姫と魔鈴は、すでにテーブルの上で煮込まれてる土鍋の蓋を開けて味見をする

土鍋の中身は鮭やキノコや野菜が味噌味のスープで煮込まれており、どうやら今夜は石狩鍋を作ったようだ

他にも鮭の塩焼きやキノコのホイル焼きに栗ご飯など、秋の味覚が所狭しと並んでいた


「じゃあ、頂きましょうか」

最後に味を整える小竜姫だったが、シロは最早限界に近くお預けを我慢出来ない子犬にしか見えない

もう少し焦らしてみたいと密かに考えるが、流石に可哀相になり丼に山盛りの栗ご飯をシロに手渡していた


「バカ犬」

小竜姫の許可が下りた途端凄まじいスピードでバクバクと食べていくシロにタマモはいつものように一言呟くが、シロはそれの反論すらも惜しいと言わんばかりに口いっぱいに料理を頬張ってく


「老師様、いかがでしたか?」

「面白い逸材じゃのう。 じゃが本格的にやるなら精神修行が先じゃな」

バカ食いするシロより一足遅れて横島達や小竜姫も食事にするが、魔鈴は老師にお酒を用意しつつ修行の成果を尋ねる

一応シロの保護者として修行の成果と課題くらいは聞いておきたかったのだ

シロの修行に関しては基本的には雪之丞任せな部分が多く、魔鈴としては教えるほどの戦闘技術が元々ない

まあ戦闘以外の霊力を扱う技術の基礎は魔鈴も少し指導しているが、GSに関わらせるつもりがないだけに現状だと雪之丞の修行相手と言った方が正しいのかもしれない


「例の超回復にアルテミスの件もあり年の割には能力が高いが、精神的には子供じゃな」

シロの現状は年を考えると素晴らしいが、やはり問題はその若さ故の精神的な問題であった

フェンリルの一件や横島の過去を聞いた影響で精神的にだいぶ大人になりしっかりしたシロだったが、基本的にはまだまだ子供な部分も多い

その精神のアンバランスさが老師は気になったようである


「あまり焦らせん方がいいのう。 ワシからも言ったがおぬしも気をつけておけ」

シロに関しては現状ではこれ以上急激な力を付けさせるのは少々問題だとの判断であった

もっとゆっくり育てた方がいいと魔鈴にアドバイスする

ちなみにシロが居る前で話してるのだが、シロ本人は料理に夢中で老師の話など全く聞いてない

この辺りの子供っぽさと成長した部分の差が問題なのである


「見てるだけでお腹いっぱいになりそうだな」

「横島さんも十分よく食べてますよ」

一方横島はいつもに増して凄まじい勢いで食べるシロの姿に乗り遅れた感じであったが、呆れ気味の口調とは裏腹にすでにお代わりをしており十分よく食べていた

小竜姫はシロと横島のお代わりを盛るので忙しかった


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