秋の夜長に……

その後魔鈴と小竜姫は栗を味見してさっそくお菓子造りの材料を買い物に行くが、スーパーに並ぶ秋の味覚の数々にせっかくだからと昼食と夕食も秋の味覚で作ることにする


「きのこなら先日栗と一緒にお土産にと収穫したのがありますよ」

「なら鮭なんかどうでしょう? この時期の鮭は脂がのって美味しいですよ」

肉や魚や野菜など美味しそうな秋の味覚が並ぶ中、魔鈴は脂がのっている鮭に目を付けていた

煮ても焼いても美味しく頂ける鮭は和洋問わず料理の幅が広がるのだ


「それがいいですね」

結局二人は鮭を中心にサツマイモや葡萄など秋の味覚を多く買って帰り、妙神山近辺で採れた栗やきのこと一緒にお菓子やスイーツに昼食と夕食の料理など次々に作って行くことになる



「今度は鮭の匂いがするでござる」

一方横島達と一緒にゲームをしたりしていたシロだが、相変わらずキッチンから微かに漂う匂いが気になるらしく敏感に反応してしまう


「シロは食いしん坊でちゅね。 まだまだ子供でちゅ」

「確かにシロは超回復で大人になったからな~」

「超回復ってなんでちゅか?」

気持ちは既に食べ物に行ってしまってるシロにパピリオは自分の事を棚に上げて子供だと呟くが、何故か横島も同意している

いろいろ経験して大人になった面もあるが、シロの元々の姿から考えるとまだ子供だと考えた方がいいのかと思ったようだ


「超回復って言うのはだな。 ……人狼の生命力がどうとか聞いた気がする」

「どうとかじゃ解らないでちゅ」

シロの話から超回復の話になった横島だったが、かつて令子に聞いた説明をきちんと覚えていなかった

元々オカルトに関わるつもりなかった横島は、小難しい話は半分ほどしか覚えてない

超回復の説明も忘れたようだ


「老師知らないっすか?」

「そもそも超回復などという術はない。 恐らく何かしらの影響で驚異的回復をした事を勝手にそう言ったのではないのか?」

超回復について説明を求めるパピリオに横島はタマモに視線を向けるが、タマモも知らないと首を振り結局老師に聞いていた

しかしフェンリル事件を詳しく知らない老師が、令子が説明の便宜上使った超回復と言う言葉を知るはずがない


「そうなんっすよ。 シロが八房って妖刀で怪我をして。 あん時もやばかったな~」

老師の推測から横島は思い出したように八房の話を始め、そこからはフェンリル事件の話になっていく

キッチンの料理に関心が向いていたシロもあの事件の話になると話したいらしく、僅かに悲しみの表情を浮かべて事件のあらましを話していった


「よく生きてたわね」

フェンリル事件の内容を聞いたタマモは思わず呆れた表情で一言呟く

特に横島はアシュタロス戦だけで大変だったはずななに、まだ知らない命の危機があったことには驚きを隠せない


「命が危なかったことなんて何度もあったよ。 平安京に行けばアシュタロスに襲われるし、月に行けばメドーサのせいで大気圏ダイブしたしな」

驚くタマモに横島はざっと思い付くだけの命の危機を語るが、そんな横島の内容にタマモのみならずパピリオや老師すらも驚いた表情を見せたのは一重に横島の過去凄まじさが原因だろう



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