「お前らケンカでもしたのか？」

不思議そうに雪之丞とタイガーに問い掛ける横島だが、二人は困った様子のままである


「こいつらの彼女だから問題無いわ。　ヒャクメわざわざありがとうな」

横島が苦笑いを浮かべて説明すると、集まったメンバーはテーブルに戻っていく


「ケンカしたんなら早めに仲直りしろよ。　どうせ近くに居るなら、呼んで来たらいい。　一緒に飯食えば少しは変わるだろ」

何も語らない二人を見て横島は勝手にケンカしたと思い込み話を進めるが、二人は悩んでいた


（弓のやつ横島の事良く思ってないからな…　横島がＧＳを辞めた後も根掘り葉掘り理由を聞いて来たし）

雪之丞は、横島とかおりは会わせてはいけないと感じている


かおりはその高いプライドで、横島を圧倒的に見下している

原因を作ったのは横島本人だが、一度見下して毛嫌いした後は悪化の一方だった

雪之丞が実力など当たり障りの無い話を説明しても、見る目が無いなどと言い信じてないのだ


（魔理さん…、なんで…？）

一方ついさっきまで魔理と一緒に居たタイガーは、何故魔理があんな真似をしてるのか理解に苦しんでいる


（何かしたですかいの？）

自分が何か疑われてるのかと思いタイガーは悩む


「ちっ！　タイガー行くぞ！」

考えるのが面倒になった雪之丞は、タイガーを連れて直接話をしに行こうとする


「私が呼びに行きますから、お二人は食事を続けて下さい」

外に出ようとした雪之丞達を止めて代わりに行ったのは魔鈴であった

彼女もまた雪之丞達がケンカをしていると、軽く勘違いをしている


「いや…　参ったな…」

魔鈴や横島の気遣いに、雪之丞は困ったように固まってしまう


「雪之丞、どうしたの？」

一人違和感に気が付いたタマモは、困った様子の雪之丞に事情を聞く

ケンカしたように見えるのだが、雪之丞の様子が少しおかしいのに気が付いていた


「実はさ、弓は横島を毛嫌いしてるんだよ。　あっちの事務所辞めた後も勝手なことで怒ってたしさ。　会わせたくないんだ」

雪之丞は横島がヒャクメの酒の相手をしてるのを確認すると、タマモに小声で説明する


「そう…　それはマズいわね。　でもこれだけたくさんの人が居れば、普通はこの場所で何か言ったりはしないでしょう？」

まさかこんな大勢の人が居る場所で、ケンカを売るような真似はしないだろうとタマモは思う


「普通はな…　ただ弓は空気とか読めないんだよ。　必要以上にプライドは高いし、どっか美神令子に似てるかもしれん」

ため息混じりの雪之丞の言葉にタマモは考え込む



そして店を出た魔鈴は、かおりと魔理の方へと歩いていた

突然店から現れた魔鈴を見て隠れる二人だが、あっさりと魔鈴に見つかってしまう


「あら、お久しぶりです。　偶然ですね～　よろしかったら今から店に来ませんか？　雪之丞さんやタイガーさんもいらっしゃいますよ」

何も言わずにさりげなく二人を誘う魔鈴に、かおりと魔理は本当に偶然見つかったと勘違いする


「あら、雪之丞が居るんですか？　せっかくなんで行こうかしら」

かおりはこの機会を絶好のチャンスと見たようだ