秋の夜長に……

そんな美智恵の近況は六月の連続殺人の事件もようやく落ち着き一段落していたのだが、オカルトGメンと警察庁との関係改善と協力体制の構築の一貫として新たな取り組みを初めていた


「これで前回のような泥仕合だけは避けれそうね」

オカルトGメンの自室でホッと一息ついている美智恵が見ている書類は、一部の警察官に対オカルトの講習と訓練を行う為の書類だった

SPやSATなどの特殊任務を行う者を中心に、対オカルトの講習と訓練を行うことで警察庁とオカルトGメン日本支部が合意したのである

この件に関しては二年ほど前のザンス国王訪日の際の不手際が元になっており、国賓を守れない日本の警察は世界に恥を晒していた事が今回の訓練に繋がっていた

他にも六月の連続殺人事件の捜査の混迷も原因になっており、警察官も最低限のオカルト知識と対策を学ぶ必要があるとの判断から今回の話になったようである

まあ霊能者でない警察官がオカルトのテロや事件にどこまで対応出来るかは未知数だが、最低限の知識と対応が出来なければオカルトGメンやGSとの連携が上手く行かないとの判断から訓練が急がれてる事であった


「来年春に予定されてるザンス国王再訪日に間に合わせろってことね……」

警察との関係改善が進んだ事はよかったが、実は来年春にはザンス国王が再び訪日する予定になっていた

前回の訪日の際の失敗で国際的に恥をかいた日本が、今度はザンス国王を招待したのである

国家元首が国賓として訪日するには異例の早さだが、国際的な信用回復と謀らずも前回の一件で深まった日本とザンスとの友好促進の為に失敗は許されない案件になっていた


「本当なら神父にも協力を依頼したいとこなんだけど……」

警察官への教育と言っても彼らも暇ではなく、通常の仕事を続けながら定期的に講習や訓練を行うことになる

本来ならば唐巣や他のGSにも協力を求めたいが、例によって唐巣はGS協会の仕事で忙しいし他の指導出来そうなGSはオカルトGメンに協力などするはずがなかった


「六道女学院の教師にでも頼むべきかしら」

短期間で一定の成果が必要なだけに、美智恵は六道女学院の教師に目を付ける

無論美智恵や西条も講習や訓練には立ち会わねばならないが、指導する霊能者は多い方がいい

「この件なら協力してくれると思うんだけど……」

基本的に六道家はオカルトGメンに協力も敵対もしてない

まあGS協会の対オカルトGメンへの反感や冷遇は、六道家の意向ではなく会員のGS達の意向が大きかった

六道家としてはオカルトGメンと一定の関係を維持しつつも、過剰な協力や敵対しない方針を貫いている

GS協会内部にはオカルトGメンとの協力関係を断ち切るべきだとの強攻論も根強くあるが、六道家はどちらかと言えば宥めてる側だった

この辺りは業界の在り方や主導権争いもあり微妙な問題なのだが、実はオカルトGメンにあまり実務能力を与えたくないGS協会と日本政府の意向が反映されている

従って普通ならば六道女学院の教師の協力などは得られないのだが、今回は警察庁との協力案件なだけに美智恵は六道女学院の協力を期待していたのである


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