秋の夜長に……

同窓会も無事終わり日常に戻った魔鈴だが、再び忙しい日々を送っていた

冬に予定している旅行の日程調整が現在大詰めを迎えており、その最終調整が行われている

これに関しては意外にも人間側の調整が大変であった

小竜姫側もワルキューレ側も暇ではないのだろうが早めに決まれば日程の都合はつくらしく、一番調整が大変なのはやはり銀一である

他にもエミや唐巣の仕事を考慮しながら日程を決めているが、主催者のはずの横島はやはり全く役に立ってなかった

魔鈴は小竜姫やワルキューレに合わせて貰うことを申し訳なく思い謝罪しつつ交渉するが、逆に二人が銀一のスケジュールを見て驚いていたのは神魔と人間の違いが大きいのだろう

寿命の違いなどからくる価値観の違いも大きいのだろうが、下手すると日本で一番忙しい部類に入る銀一の殺人的なスケジュールは神魔をも越えているのかもしれない


「二人とも本当に器用ですね」

そしてこの日の魔鈴宅では、横島とタマモが大きなカボチャをくり抜いてハロウィンの準備をしていた

秋の新メニューに合わせて何かイベントでもしようと例によって横島が突然思い付いたように言い出した結果、ハロウィンをやろうとなったらしい


「ハロウィンは本来は収穫祭なんですけどね……」

日本人的な思考の横島はどんなイベントでも楽しめばいいと軽く考えているが、魔鈴は微妙に抵抗があるらしい


「そうなんっすか?」

「ええ、ヨーロッパでは古くから伝わる行事の一つで、ヨーロッパなどでは霊的にも重要な意味のある行事の一つなんですよ」

ハロウィンと言えば仮装してお菓子をねだる子供が来ることしか知らない横島は、霊的にも意味のある行事だと聞き驚いていた


「そんな意味があったんっすね」

「まあ土地や民族によっても違いますし、内容は様々ですけど……」

ハロウィンには魔よけの意味があることや一部ではそれに魔女が加わっていた歴史などもあり魔鈴は多少複雑な気持ちになるが、横島は純粋なイベントとしか考えてない

多少複雑な心境の魔鈴だが、ただの楽しむイベントとして行うならいいかと気持ちを切り替えていた

まあ妖狐や人狼の働く魔鈴の店では魔よけなどしなくても悪霊が逃げ出す環境であり、魔鈴は横島と付き合う以上は細かいことを深く考えるのを辞めようと心に決める


「それでお菓子も配るですか?」

「ああ、そのつもりですよ。 ちょっとしたお菓子でも子供の時は嬉しいもんですし、この機会に家族連れの客層を増やそうかと思って」

相変わらずオカルトの常識はない横島だが、経営的な感覚は抜群だった

魔法料理魔鈴の客層に子供連れのお客は少なく、そもそも本格的なレストランだけになかなか家族で気軽にとはいかない雰囲気があるのだ

横島はこの機会に家族連れの客をターゲットにしようと考えている


(行き当たりばったりに見えて考えてるんですよね。 しかも今までのアイデアも成功してますし……)

一見するとよくあるアイデアだったり行き当たりばったりに見える横島の行動だが、今まではそれが当たって来たのも事実だった

ハロウィンの本来の姿を知る魔鈴としては微妙な気持ちは残るが、案外横島に任せてしまった方がいいと割り切っていたりもする

何より横島が自らやる気を出してることを魔鈴は止めたくなかった



1/41ページ
スキ