嵐を呼ぶ再会

楽しかった時間もいよいよ終わりに近付いていた

かつては毎日顔を合わせて一緒に勉強をした友人との別れは、やはり寂しいものである

共に別々の道を歩んだ今でもあの頃の思い出は忘れられない


「綾これを持って行って」

帰り支度をする綾に魔鈴は小さなお守りを二つ渡す

しかしそのお守りは何も書いてなく、開けられないように閉じた中には何かの玉のような物が入っている


「お守りかしら?」

「ええ、一回だけだけど持ち主の危機を本当に救ってくれるわ。 ただしこれは他の人には絶対に言ったり見せたりしないでほしいの」

何も書いてないお守りを不思議そうに見ていた綾だったが、魔鈴の真剣な表情に何かやばい秘密があると察する


「うん、わかった」

秘密を隠したい意図を理解した綾はアンディにも確認して一つ渡すが、彼は僅かに驚きの表情を浮かべていた


「ごめんね。 本当は見送りに行きたかったんだけど……」

「その気持ちだけで十分よ。 そのうちヒャクメ様と一緒に会えるだろうしね」

かつて高級卒業と同時に別々の道に別れた二人だったが、今回の別れの方が寂しい気がしている

ヒャクメの話はそんな二人に僅かな希望を齎していた


「横島君も今日はありがとう。 シロちゃんとタマモちゃんには次回お土産買って来るわ」

「大変でしょうけど頑張って下さい」

寂しさを見せながらも元気と笑顔を残して綾達は帰っていく

そんな二人を見送った後、ヒャクメと雪之丞も帰り魔鈴宅はいつもの静けさが戻っていた



「ねえ、アンディ。 貴方前から横島君のこと知ってたの?」

「ああ、二年ほど前にある事件に参加した時に彼を見掛けたことがある」

魔鈴の店を後にして二人っきりになった綾は、ずっと気になっていたことをアンディに尋ねる

銀行強盗の時、横島に声をかけたのがアンディだと聞いた時から綾は気になっていたらしい


「二年前?」

「世界の終わりが来たと騒いでいた頃の話さ。 多くの謎と噂を残したあの事件の中心に彼は居たんだ」

アンディの話に綾はようやく核ジャック事件を思い出すが、まさかあの事件に横島が関わってたとは思えないようだ


「ちょっと待って。 二年前って言えば彼は未成年の高校生よ。 なんでそんな危険な事件に?」

「さあな。 俺も詳しくは知らない。 ただあの事件には隠された真相があるとか、真偽がはっきりしない噂はいろいろあったよ。 中にはアシュタロスを本当に倒したのは未成年の見習いGSだって話とかな。 その見習いは不思議な霊能力の持ち主で、小さな玉を持ってアシュタロスを倒したとかな」

「それってまさか……」

アンディの語る一つの噂を聞いて綾は先程貰ったお守りを見つめる

真偽がはっきりしないただのデマかもしれないが、一概にデマだと言い切れない状況を今日体験したのだ

まさかとは思うが、神族が遊びに来たりする横島ならばありえない話でもない



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