それぞれの想い

そんな感じでエミ達とたわいもない話をした横島は、次にワルキューレ達と小竜姫達の元に行っていた


「楽しんでるか?」

ここでも横島は一人一人に酒を接いでいく


「ああ、たまには人界の酒も悪くない」

少し満足そうな笑顔を見せたワルキューレは、洋酒を中心に飲んでいる


「そういえば、店の前で怪しげな霊能者がここの様子を伺ってましたが、何かトラブルですか?」

ふと思い出したように話したのはジークであった

怪しげな霊能者とはもちろんかおりと魔理である


一応魔鈴の店から離れて隠れていた二人だったが、ワルキューレやジークから見ればまる見えと同じだ


「霊能者…、確かにトラブルは多少あるんだが……」

ジークの話に、先ほどまでは軽い調子で笑っていた横島の表情が一変した

(美智恵さんの関係か? それとも別口か?)

横島が一番に浮かんだのは美智恵の関係者である

百合子は自分がカタをつけると言ったが、美神家の執念深さは横島が一番理解しているのだから


「悪い、俺少し確認してくるわ。 ゆっくり飲んでてくれ」
 
「横島、ちょっと待て。 確認するだけならヒャクメが居るだろう」

少し不安になった横島が相手を確認しに外に出ようとしたが、ワルキューレに止められていた


「そういえば、ヒャクメが居たな…」

うっかりしていた横島は苦笑いを浮かべて、ヒャクメの席に行く


「私に任せるのねー!! スパイの心の中まで覗いて秘密を暴くのねー」

横島に確認を頼まれたヒャクメは、やる気満々な様子で立ち上がる

どうやらほろ酔いで、気持ちが大きくなっているようだ


「いや、スパイと決まった訳じゃないんだが…、とりあえず顔の確認だけ頼むわ」

少し引き攣った表情の横島が頼むと、ヒャクメは心眼で外をキョロキョロと見回していく


「あー! スパイが居たのねー!」

ヒャクメのが大声で叫んだため、店内は一瞬で静まり返った


「スパイ?」

それぞれに酒や料理を楽しんでいた者達や、魔鈴やタマモやシロまで何事かとヒャクメの周りに集まってしまう


「横島さん、何事ですか?」

「いや、ジークが店の前に怪しげな霊能者が居るのを見つけてさ…」

驚き事情を尋ねる魔鈴に、横島は簡単に説明をした


「ヒャクメ、みんなに見せなさい。 相手の正体を知る人が居るかもしれません」

横島の話の内容を聞いた一同は、微妙に緊張感が出ていた

ヒャクメは小竜姫に促されるまま、自分のパソコンに怪しい霊能者を見せようとする


「この人達なのねー」

ヒャクメが見せたのはもちろん、こそこそと店を覗くかおりと魔理であった


「あら…、この二人は……」

驚き雪之丞とタイガーを見る魔鈴

横島やエミなど二人の正体を知る者も同じく、無言で雪之丞達を見ていた


「知り合いかい?」

微妙な空気を悟った唐巣は、雪之丞とタイガーを見て事情を確認する


「ああ…」

「魔理さん…」

ため息をはき困ったような表情をする雪之丞と、不思議そうに目を見開くタイガーにみんなの視線が集まっていた

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