嵐を呼ぶ再会

「妖狐にバンパイアハーフに九十九神? 本当に実在するとは思わなかったわ」

そのまま二人を魔鈴宅のリビングに案内してちょうど居た者を紹介していくが、お伽話にでも出て来そうな名前の連続に綾とアンディは流石に驚きを隠せない

特にタマモとピートは見た目だけでは判断が出来ずに、思わず尻尾やキバを探したほどである


「ちょっと居ない間に東京も変わったわね~」

「いや元々東京にも妖怪は居たらしいっすよ。 ただ妖怪って名乗らないだけで……」

ピートは見習いGSだと言うし愛子は学生兼事務員だと語るので綾はいつの間にか東京も変わったと感じるが、実は元々東京には妖怪が多く正体を隠してるだけだと説明すると不思議そうに考え込んでいた


「まあ細かい事はいいわ。 せっかくだからみんな飲むわよ!」

妖怪と人間社会について僅かに考え込んでいた綾だったが、よく分からないという結論に至りとりあえず飲もうと言い出す


「えっ、私も!?」

「あれ未成年だった?」

「いや年は違うけど……」

「せっかくだから一杯飲もうよ」

飲むと決めた以上早く飲みたいからと魔鈴に酒を要求した綾は、横島や雪之丞のみならずピートや愛子まで酒を接いでいく

なんというかさっきまで妖怪に驚いていた一般人があっさり割り切って酒を接ぐ姿に、愛子とピートはポカーンとしてしまう


「それじゃ、カンパ~イ」

駆け付け三杯と言わんばかりに乾杯した酒を一気に飲み干す姿を、ピート達は感心したように見つめる

細かい事をどっかに置いて来たような彼女の態度は何処か横島に似てる気がした


「ねえねえ、一回化かされてみたいんだけど」

「えっ!? えっと……」

お酒も入り気持ちが上がって来たのか、突然綾はタマモに化かしてほしいと言い出す

そんな綾の言葉に流石のタマモも慌てた様子になり、困った表情を見せる

妖怪なのを気にしなかった人間は今までも居たが、自分から化かされてみたいと言われた経験は初めてだった


「いいんじゃねえか。 面白いだろ」

「ちょっと横島!?」

綾の突拍子もない言葉に横島がアッサリ乗ると綾は期待するような視線をタマモに向ける

なんと言うか頭のネジが一本ないんじゃないかと本気で考えるほどタマモは戸惑ってしまう


「もう~、綾も突然そんなこと言うからタマモちゃんが戸惑ってるわ」

「えっ、ダメなの? お伽話なんかだと化かすのが好きだから好きなのかと…… それに一度くらい経験してみたいじゃない」

横島の言葉でタマモが更に戸惑ったために、魔鈴がたまらず止めに入るが綾は全く悪気がなかった

まるでお化け屋敷や絶叫マシーンに乗るような感覚で考える綾に、ピート達が更に不思議そうだったのは言うまでもない


「確かに経験してみたい気持ちはわかるけど……」

「お互いよく知るいい機会じゃない」

一度くらいは化かされてみたいと言い切る綾に魔鈴は僅かに同意してしまう

よく考えたら魔鈴も化かされた経験がないし、危険な事でもないため一度くらいは体験してみたいとの気持ちが込み上げて来る


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