銀行内は静寂に包まれていた

突然強烈な閃光が辺りを照らしたかと思えば、銃声一つなく犯人達は倒れているのだから

しかもそこにいたのは外国人ただ一人なのだから、銀行員や居合わせた客達はただただ驚くしかない


「大丈夫か？」

「いや～、日本も物騒になったわね」

そんな中アンディは恋人である綾ともう一人の女性に声を掛けていたが、呆然とするもう一人の女性と対照的に綾は元気なままだった

まあ怖くなかった訳ではないのだろうが、ショックを受けるほどでもないらしい

その直後に異変を察知した警察官が突入して来るが、すでに犯人達は気を失っており逮捕するだけだった


「外人さんは強いね」

「ありがとうございました」

警察官が気絶した犯人を確保したところで銀行内はようやくホッとした空気が広がり、客達や銀行員達は活躍したアンディの周りに集まりお礼を言う者達に囲まれている

一方そこに何故か横島の姿はなく、横島はいつの間にか魔鈴の元に戻っていた

実はあの瞬間、文珠の閃光を消す前に横島はさっさと元の位置に戻っていたのだ


「お見事でしたね」

「二度と勘弁して欲しいっすよ」

なんとか無事に終わって疲れた表情をしてる横島に、魔鈴は素直に感心していた

あの一瞬でたった二人で銀行強盗を制圧したのは、見事としか言いようがない

例え相手が銃を持っただけの素人とはいえ、兵士でも警察官でもない横島には簡単なことではないのだ

しかも面倒事に巻き込まれないように戻って来たことも魔鈴の高い評価の原因だった


そしてそのままアンディは警察に取り押さえた事情を聞かれるなどあるが、彼は横島の事を口にしなく全て自分がやったと説明する

最初の閃光に関してはＧＳである魔鈴が協力したと言い出したので、表向き魔鈴の協力を得たアンディが銀行強盗を捕まえたことで落ち着く

結局近くの警察署で事情を説明するのに二時間ほど時間がかかったが、犯人にも人質にも怪我がないため特に問題もなく終わることになる



「まさか日本に帰って来て事件に巻き込まれるとは思わなかったわ。　向こうでは気をつけてたんだけどねー」

「銀行強盗なんて珍しいんですけどね。　日本では聞いたことないわよ」

予定外に時間が懸かったが警察署を後にした綾と魔鈴は、ホッとしたような驚いたような微妙な感じであった

まさか日本で銀行強盗に遭遇して人質になりそうになるなど思いもしなかったようである

まあその割に恐怖や怯えた様子が見えないのは、彼女の性格からくるものが大きいのだろう


「それにしても、横島君は強かったわね～　何がビックリしたってそれが一番ビックリしたわ」

警察署を出たことで先程から気になっていたことをサラッと暴露する綾は、どうやらあの瞬間横島が助けに入ったのを偶然見たらしい

横島本人が素知らぬふりをしていたこととアンディが何も言わなかったことから黙っていたが、彼女は真実を見ていたようだ


「俺も一応霊能者なんっすよ。　ＧＳが向かないんで辞めたんですけどね」

綾が見ていたことに少し意外そうな表情を見せる横島だったが、別に隠す必要もないので実は霊能者なのだと告げていた