次の日の朝、横島が目を覚ますと静かに寝息を立てる魔鈴の姿があった

横島が魔鈴宅に来てから半年を越えたが、横島が魔鈴より先に起きるのは非常に珍しい

基本的に朝は魔鈴の方が早く、いつの間にか起きて朝食の準備をしてることが多かったのだ


（こうやって見ると年上には見えんな）

横島自身は女性の寝顔を見たのは魔鈴しか居ないので他はどうなのか知らないが、魔鈴の寝顔は昼間とは違い幼いものがある

よく女は化粧を落とすと別人になると言うが、それは魔鈴も同じだった

最も魔鈴の場合は化粧をしない方が可愛いい感じになるのだが……

普段の大人色気とは全く別の魔鈴がそこにはあった


（たまには俺が朝飯作るか。　流石に毎朝申し訳ないしな）

しばらく魔鈴の寝顔を堪能していた横島だったが、たまには魔鈴に楽をさせねばならないと静かに寝室を出ていく

少し余談だが、日頃魔鈴宅での料理は基本的に魔鈴が全て作っている

料理が仕事でもあり趣味でもある魔鈴は日頃の食事の準備も好きらしい

まあ最近はタマモやシロに料理を教えながら作っているので魔鈴が一人で作ってる訳ではないが……


ちなみに横島に関しては食後の食器洗いは手伝っている

元々魔鈴は横島に対して家事手伝いなどは全く要求したりしないのだが、横島は魔鈴が後片付けなどをする中で自分だけ何もしないのは落ち着かないらしい

実はこの辺りに関しては横島と魔鈴の関係を象徴するような形であり、基本的に魔鈴は仕事以外では横島に何かさせることはほとんどないのだ

ほっとくとまるで良妻賢母のように何でもやってしまう魔鈴だったが、実のところ横島はそれが微妙に不安の元だったりする

百合子や令子のように横島を縛り付けていた者達の影響からか、横島は求められないと微妙に不安を感じるようだった

結局横島は横島なりに嫌われないように努力しているし考えてもいる

基本的に仕事から私生活まで魔鈴に世話になってるだけに、横島は見た目以上に魔鈴に気を使っていた

ただ魔鈴としてはどちらかと言えば、普段からもっと自分に自信を持って引っ張ってくれるくらいになってほしいのだが……

流石に付き合って半年なので、微妙な価値観のズレは存在するようである



「先生おはようござい……　まっ魔鈴殿は体調が悪いのでござるか！？」

静かに起き出した横島はさっそくキッチンで朝食の準備を始めるが、例によって朝が早いシロが起きて来ると魔鈴でなく横島が朝食の準備をする姿にビックリしてしまう


「いや、寝てるだけだって！　たまにはゆっくりさせてやらんとな」

「珍しいでござるな～　拙者より早起きの時もある魔鈴殿が寝坊でござるか」

具合が悪いなら様子をみなければと思わず魔鈴の寝室に走って行こうとするシロをなんとか止めた横島は、僅かに苦笑いを浮かべて普通に寝てるだけだと話す

それでもシロは魔鈴が心配なようだが、昨夜も遅かった事からたまには寝坊もするだろうと説明するとようやく納得する

シロはそのまま横島と一緒に朝食の準備を手伝い、この日は横島とシロが朝食を作ることになった