嵐を呼ぶ再会

「でも彼女は敵の魔族で令子ちゃんは人間です。 どちらかを選ぶならば……」

ルシオラに関しては気の毒には思う西条だったが、極論を言えば令子と比べて令子を選ぶのは仕方ないと感じるようだ

実際美智恵が介入しなかった未来がどうなのか西条は知らないが、所詮ルシオラは敵の魔族であり人間の令子と比べると差が出るのは仕方ないと考えている


「理屈じゃないのよ西条君。 きっと何処まで話し合っても互いに納得は出来ないわ。 貴方も横島君のことは忘れなさい」

西条は西条なりの価値観と理屈で考えているが、美智恵はそれが横島に通用しないのを理解していた

仮に横島と美智恵が話し合っても、互いに納得する結果にたどり着くことは出来ないのだ


(無理なのよ。 失ったヒトが戻らない限りはね)

美智恵自身も横島と令子の和解に必要な存在が欠けている事実には当然気付いているが、それだけはどうしようもない

それに中途半端に関わっても、決していい結果を生まないことはよく理解している


「先生……」

「理屈や話し合いで全て解決するなら誰も苦労なんてしないわ。 結局横島君が弱かっただけの話。 心も力も全てね」

複雑そうな西条に美智恵は、理屈や理想だけでは意味がないと言い聞かせるように語っていく

それは正義感や理想を大切にする西条への忠告でもあった

今だに横島への怒りや憤りを見せる西条だが、それを裏返せば心のどこかで話し合いで解決出来ると考えてる節がある

美智恵はそんな西条の考えの甘さが気になって仕方ないようだった


「まあ横島君の話はいいわ。 とりあえず令子の件はお願いね」

「はい、分かりました」

少し話が脱線したが令子と西条の関係を元に戻す事では二人の意見は一致している

それとこれ以上令子の人間不信や男性不信を悪化させないように、西条と美智恵は協力する事になる



「今更な話だけど、もっと強引に令子に迫ってもよかったのよ。 西条君も令子もダメなんだから…… 私なんて自分から旦那に何度も迫ったのよ。 あの人は本当にいくじなしだったから」

令子への話が一区切り着いた事で美智恵はホッと一息つきながらも、以前から西条に思っていた事を口にしていた

正直この半年が西条にとってチャンスだった事には変わりない

西条がかつての横島のように後先考えずに令子に迫っていれば、おそらくは令子と西条はもう少し深い関係になったと考えているようだ


「先生!?」

「西条君も肝心な時に弱腰になるんだから……」

美智恵の思わぬ本音に西条は驚き目を見開くが、結局は今更な話であった

というか今まで語らなかった美智恵の恋愛観に驚愕を受けていたとも言える


(そういえば令子ちゃんへのセクハラ騒ぎで、先生が怒ったのは見たこと無かったな……)

美智恵の恋愛観はどちらかと言えば西条よりはかつての横島に近いのだと、西条は今更気付いていた

しかしそれはあまりにも遅い発見であった



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