「ＧＳがそんなに過酷な仕事だったなんて…」

小鳩はエミの話に驚いていたが、ある意味共感出来る部分もあるようだ

貧乏神の影響で人の裏側や汚い面をたくさん見て苦労してきた彼女だけに、エミの話をよく理解しているのだろう


「横島にはそれが無いのよ。　割り切ることも出来ないし、自分を犠牲にして他人を救う覚悟も無い。　だからＧＳは向かないワケ」

エミが語る横島の欠点は、その甘さと精神的未熟さであった


無論彼女が知る横島はアシュタロス戦までの横島である

その後の横島の苦悩や変化は知らないが、それでも本質的には言っていることは当たっていた


「ＧＳは除霊中の事故で亡くなったり、再起不能になることは珍しくない。　覚悟や割り切りの無い優しさはいずれ本人を滅ぼすわ」

滅ぼすと言うエミの言葉に銀一達のみならず、ピートの表情にも緊張感が走る

一流のＧＳのエミの言葉だけに、非常に重く現実味がある言葉であった


（横島はもう経験してしまったけどね）

エミはその言葉を静かに飲み込む


割り切りも覚悟も無いのに、霊能力だけは高い横島が巻き込まれたアシュタロス戦の結果が現状である

心に計り知れない傷を負い、今後の人生にもずっと影響するだろうと思う


実はエミ自身、横島が令子と対立して離れたことを知っている

詳しい事情や横島の気持ちは無論知らないが、縁を切るような別れ方をしたのは情報を得ていた


そして今日来てみて、うっすらとだが横島の気持ちや事情を察している

令子や美智恵や西条やおキヌなど美神家の関係者だけがこの場に居なく、ベスパや魔鈴との会話を聞いていたエミは、現状を大まかに理解していた


（横っち…）

（横島さん…）

（横島君…）

そして銀一達も、エミの話を聞いてうっすら感じ始めている

横島には何か重大なことがあったのだと……


「まあ向き不向きだけで言えば、横島は客商売の方が向いてるワケ。　これだけの神魔や妖怪や人間を集めれる人間は他に居ないもの」

料理を運んだりしながらあちこちに話しかけてる横島を見て、エミは少し笑顔を見せる


「みんな酒と料理足りてるか？　全く、あいつらばっかり食いやがって……」

ちょうどエミの話が終わった頃、横島がエミ達のテーブルに来ていた

横島は凄まじいスピードで食べ続ける雪之丞達に苦笑いを浮かべつつ、エミ達に飲み物を注いでいく


「あら、珍しく気が利くじゃない？　やっぱり彼女が出来れば変わるのかしら？」

ニヤニヤとした笑顔を浮かべて横島をからかうエミを見て、銀一は思わず笑ってしまう


「いや～　その～」

困ったように笑ってごまかす横島に、愛子や小鳩も笑顔を見せていく

二人は少し心が痛む気もするが、横島の幸せそうな姿を見ると嬉しくもあった


「横島君～、このケーキ美味しいわ～」

ニコニコとケーキを食べていた冥子が幸せそうに笑顔を見せる


「そのケーキはマリアのお土産っすよ。　魔鈴さんのデザートはもう少ししたら出すそうです」

「凄いわね～　今度私にも作ってくれないかしら～」

何やらマリアのケーキを気に入った様子の冥子に、エミとピートはこれで余計なことは言わないだろうと思い、人知れずホッとしていたのは言うまでもない