そのまま二次会は賑やかに進んでいくが、夫が注目を集めることに機嫌をよくしたのか高宮はあまり魔鈴のことを口にしなくなっていた

まあそれでも横島がどんな人物から気になるらしくチラチラと見てはいるが、何処をどう見ても普通の年下にしか見えない

高宮の夫と綾の恋人であるアンディの影で魔鈴の恋人として密かに注目を集める横島だったが、平々凡々とした態度により関心は次第に薄れていく

当初は魔鈴の恋人と自分の夫をみんなの前で比べるつもりだった高宮でさえも、あまりの違いにそれをしなかったほど横島と高宮の夫では勝負にならなかった

正直見た目はさほど差がないのだが、社会的立場や社会人としての気遣いなどは圧倒的に高宮の夫が上である

それでも横島が過剰に注目を集めれば変わるかもしれないが、現状だとそれほどでもない訳だし……



ようやく落ち着いてホッとする魔鈴だったが、またもや運命の悪戯が魔鈴の元に舞い降りることになる


「忠夫じゃないか。　珍しい場所で会ったな～」

「親父！？」

そう……、一次会の銀一と移動中の冥菜に続き、二次会では大樹に偶然出会ってしまったのだ

大樹よりも年上の男性と一緒であった大樹は、店に入るなり横島と目が合ってしまい僅かに微妙な表情をする

しかしそれは横島もまた同じで、微妙に迷惑そうな表情を浮かべていた


「ほ～、横島君と百合ちゃんの息子か。　なかなか立派じゃないか」

「いや～、大学にも行けなかった馬鹿息子ですよ」

横島と大樹の会話から横島が息子だと分かると、大樹と一緒だった男性は横島に注目をする

どうやら浮気ではないと悟った横島は流石にすぐに立ち上がり、大樹と一緒の男性に挨拶に向かう


「初めまして横島忠夫です」

「若い頃の横島君にそっくりだな」

挨拶に来た横島を見て男性は興味津々な様子で挨拶を交わして名刺を渡すが、横島は名刺など持ってないため受け取るだけだった

しかし横島はその名刺を見て驚き固まってしまう

相手は横島も良く知る日本最大の小売業の経営者だったのだから


「ところで忠夫、お前なんでここに？」

「ああ魔鈴さんの同窓会に呼ばれてな」

挨拶を済ませたところで大樹は横島が夜の街に居る訳を聞き、魔鈴が居ることに気付くと今度は魔鈴を呼んでいた


「息子の彼女なんですよ」

「初めまして、魔鈴めぐみです」

さて友人達と酒を飲んでいた魔鈴だったが、当然大樹が来たことには気付いている

しかし一緒に居る男性から仕事上の接待だろうと判断して、魔鈴からは声をかけなかったのだ

と言うのも一緒の男性は割と有名な経営者であり、横島以外の魔鈴の元クラスメート達もみんな顔は知ってるほどの人物である

当然元クラスメート達は突然の事態に唖然として、横島と大樹達の会話を聞いていた

ようやく普通の一般人として落ち着いた魔鈴の恋人の話題だが、その親が日本でも有数の経営者と一緒だと分かると再び横島に注目が集まってしまうのは当然の流れだろう


「ねえ、めぐみの知り合いってみんな凄いわね……」

銀一・冥菜に続いて恋人の親が一流企業の経営者と知り合いとなれば、誰もが魔鈴の交遊関係に驚くのは仕方ない

しかしそれらが全て偶然が重なっただけなのだと言う真実は、やはり伝わることはなかった