嵐を呼ぶ再会

かつて横島をモテないと笑う女性は数多く居たが、横島をモテるようにしようと考えてくれた女性は魔鈴だけだった

結果的に失敗はしたが、あの件は実は横島にとっては非常にいい思い出だったりする

まあこれは魔鈴と結ばれる直線的な理由とは結び付かないが、アシュタロス戦後の誰も信用出来なかった頃の横島が魔鈴との交流が続いた一因にはなってるだろう


「そうっすね。 俺も今だに信じられないっすよ。 魔鈴さんなら俺よりもっといい人見つかるでしょうし……」

魔鈴に対しての叶わない想いを抱えていた男性達に、横島は共感するような気持ちを感じていた

正直魔鈴ならば自分よりももっといい男性と付き合えると横島は思うし、何故自分が魔鈴にこれほど愛されてるのか不思議な気持ちは現在もある


「君がそんなことを言ってちゃダメだ! 君は男なんだから魔鈴君を命に変えても守らるくらいの決意が必要なんだぞ」

横島がポロッと漏らした弱音のような本音に、男性達は横島を叱咤激励するように強い口調で語り始めた

彼らからすれば魔鈴に愛された横島には、もっと強く自信を持って欲しいのだろう


「いや、魔鈴さんは必ず守ります。 そのくらいの覚悟はあるつもりっすよ」

なんというか絡み半分叱咤激励半分の男性達に横島は若干困った様子だが、魔鈴を守るとだけははっきり言い切る

しかし命に変えてもという言葉は意図的にスルーしていた

横島にとって命に変えてもとの言葉は、仮の例え話でも言えない言葉だった

残される者の悲しみや苦しみを知るが故に、横島はそれだけは冗談でも言えない言葉である


まあそんな横島の心の動きに気付くはずもない男性達だが、横島が魔鈴を守ると言い切ったことに気分をよくして再び盛り上がっていく

確かな覚悟を口にした横島を彼らは認め、横島と彼らはまるで昔からの友人のように魔鈴の昔話で盛り上がっていた


「めぐみの彼、いつの間にか馴染んでるわね」

「もっと荒れると思ったのに……」

一方いつの間にか横島が男性陣と盛り上がるのを魔鈴の友人達は不思議そうに見ている

男性陣の中には高校時代に魔鈴に振られた者もおり、魔鈴の恋人が現れるともっと荒れると彼女達は考えていたらしい

それがいつの間にか一緒に酒を飲み魔鈴の高校時代の話で盛り上がるのは、彼女達からすれば少し不思議なようだ


「なんか一緒に居ると楽しそうな人ね。 ちょっと貸してくれない?」

「ダメですよ。 ちょっとじゃ済まなくなるわ」

「うわ~、凄い自信ね。 いや惚気かな?」

横島が男性陣と仲良く飲む姿に魔鈴の友人達は興味が沸いて来たらしく、冗談混じりに貸して欲しいと言うが魔鈴は笑顔で拒否している

そんな魔鈴を友人達は惚気かとつっこむが、魔鈴は笑顔のままで肯定も否定もしなかった


「本人に自覚はないんですが結構モテるんです。 店のお客さんとも割とすぐ仲良くなっちゃいますし、女の人には特に優しいですから」

友人達に冷やかされながらも普段の横島を教えていくが、案外本人に自覚がないのが余計にタチが悪いと魔鈴は感じている

元々は下心が全面に出ていた為に目立たなかった、横島の優しさなどの長所が目立つと地味にモテていたのだ


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