嵐を呼ぶ再会

「彼ってイケメンなの?」

「近畿君と友達の彼氏って羨ましい」

銀一との偶然の再会は、友人達に魔鈴の恋人の興味を抱かせるには十分だった

どうも銀一の友人という事でかなりイケメンだと考えた者も居るようで、妙にハードルが上がってる形である

魔鈴はただの一般人だし普通の人だからと再三言うのだが、高校時代に数々の男性を振った魔鈴の過去も合わさるとただ者ではないのではと話が進んでいく


「ねえ、実際のとこどうなの?」

魔鈴の恋人の話題で盛り上がる元クラスメート達を尻目に、綾は困惑気味の魔鈴に真実を尋ねていた

ただの一般人ではないのではとの疑問は綾でさえ持ってるらしい


「見た目は本当に普通なの。 それに横島さんの良さを言葉で伝えるのは難しいわ」

興味津々の親友に魔鈴はちょっと考えながらも答えるが、横島ほど他人に良さを伝えるのが難しい人間も珍しいと魔鈴は理解していた

以前と比べれば格段にいい面が見えるようになった横島だったが、それでも本当の良さを他人に伝えるのは難しいのだ

魔鈴自身なんと伝えていいのか分からない


「横島さんの良さを恐らくみんなは理解出来ないと思う。 でもね、私はそれでいいとも思ってるの。 横島さんの良さにみんなが気付く時が来るとすれば、それはきっと大変な時になると思うから……」

僅かに複雑そうな表情を浮かべながらも恋人の良さが伝わらない方がいいと語る魔鈴に、綾は素直に驚きを隠せないでいた

高宮のように自慢するのもアレだが、自分の恋人が正確に評価されなくていいと言い切る魔鈴の真意が分からない

それが形で表すことの出来ない良さだと綾は気付くが、それを隠す意図が理解出来ないようだった


「これじゃ私がピエロみたいじゃない! 私の夫の方が交遊関係は広いのよ!?」

一方銀一の登場で注目と話題を更に集めた結果になった魔鈴に、高宮はやはり対抗意識を燃やしていた

先程まで散々自慢していた高宮だったが、実際に銀一と親しげに話す魔鈴には話題では敵うはずもない

全くの偶然の出来事なのだが、結果的には再び魔鈴の引立て役になってしまった事が高宮は面白くないようである


「相手は半年前まで高校生だったんでしょ? 貴女の夫と比べるのは可哀相よ。 まあ十年後なら分からないでしょうけど」

魔鈴への対抗意識からいつの間にか互いの恋人を比べ出した高宮に、友人は苦笑いを浮かべてあまりに可哀相だと告げていた

友人から見れば仮に魔鈴の恋人がどれだけ優秀でも所詮は社会人一年生な訳だし、一企業を経営する高宮の夫と比べるのはあまりに可哀相としか言いようがない


「十年後ってどういう意味よ!」

「めぐみの恋人が大成するかしないか判断するにしても最低十年は必要でしょ? それにめぐみの恋人がただのエリートのお坊ちゃんな訳ないし……」

高宮は十年という言葉に噛み付くが、仮に魔鈴の恋人と高宮な夫を比べるにしても十年は待たないと意味がないと友人は告げる

しかし高宮がそんな言葉で納得するならば、魔鈴との関係もここまで拗れてないだろう


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