嵐を呼ぶ再会

さて残暑もようやく一息ついた十月初旬のある日、成田空港にはニューヨークから帰国した綾の姿があった

仕事をやり繰りしてなんとか一週間の休みをとった綾は同窓会出席の為に帰国したのである


「ようやく到着したな。 君の親友に会えるのが楽しみだよ」

「その前にお父さんとお母さんに会うんだからしっかりお願いね」

スーツケースを片手に空港を出た綾だが、隣にはスーツが破れそうなほど筋骨隆々で胸板が厚い黒人の男性が一緒だった

どうやら相手は綾の恋人らしく、ついでに両親と魔鈴に紹介しようと連れて来たらしい



「そろそろ着いた頃ですね」

一方魔鈴は店の厨房で料理をしながらも、親友の帰国時間が過ぎたことに気付いていた


「迎えに行かなくてよかったんっすか?」

「ええ、せっかくなんでお互い同窓会で会おうってことになってるんです。 横島さんには同窓会の次の日に会ってもらう予定ですよ」

皿洗いをしながら迎えに行かなくてよかったのか気にする横島だったが、魔鈴達はせっかくだから同窓会で再会することにしたらしい

加えて横島と綾を会わせるのも同窓会の次の日に決めており、すでにある程度予定が決まってるようだった


「いやー、今から緊張するっすね」

「いつもと同じでいいんですよ」

魔鈴の親友に会うというプレッシャーがどうしても抜けない横島は、魔鈴に恥をかかせられないと考えるとどうしても緊張するようである


「綾も恋人を連れて来るみたいなんで、普通に食事に行くことにしました」

どうやら高校時代にお互いに恋人が出来たら一緒にダブルデートしようと約束していたらしく、今回その約束も果たすようであった

あまり堅苦しくない店で、お昼頃からゆっくりおしゃべりしながら食事でもしようとなったらしい


「なんかヘマしそうね。 横島ってここ一番で失敗しそうだし……」

「先生なら大丈夫でござる!」

緊張気味で不安そうな横島にタマモは何か嫌な予感を感じてしまうが、シロは理由もなく横島は失敗しないと言い切る

しかし横島を信じてるシロですら一瞬言葉に詰まったことから、シロも多少は不安を感じてるらしい


「お前ら……」

ヘマをしないように気をつけろと言うタマモと信じてると言いつつ微妙に不安そうなシロに、横島は深いため息をはくしか出来なかった

まあ魔鈴は仮に横島が何かヘマをしても別に気にしないが、横島はやっぱり気にするのだ


「もうちょっと自分に自信を持ってくれるといいんですけどね」

こんな場合の横島に一番必要なのは自信なのだろうと思う魔鈴だったが、世の中で一番信じられないのが自分だと考える横島が自分に自信を持つのは難しかった


結局魔鈴は横島が緊張し過ぎないように優しく元気付けていくしかない

百合子や令子が壊してしまった横島の自信やプライドに、魔鈴は人知れず苦労していた

彼女達は横島を押さえ付けることでコントロールしようとしたが、明らかに逆効果になっている

よく叱って伸びるタイプとか褒めて伸びるタイプだとか言うが、元々反骨精神の薄い横島はどちらかと言えば褒めないと伸びないタイプだった


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