嵐を呼ぶ再会

「未来か……」

妖怪達の未来は決して明るくはない

人間次第でいつ滅ぼされるか分からないと言い切るタマモに、横島は複雑な感情を抱えてしまう


「前々から気になってたんだけど、私やシロの人生まで横島が背負う必要なんてないのよ。 それに私はもう十分幸せだから……」

複雑そうな表情のまま無言になる横島に、タマモは必要以上に自分達の未来を背負わなくていいと告げて家に入っていく

表情こと相変わらず変わらなかったが、その言葉にはタマモなりの優しさが現れている


「別に背負ってるつもりはないんだけどな~。 ただ……、残される者の気持ちが分かっちまうんだよな」

タマモが去った後、横島は独り言のように静かに呟き苦笑いを浮かべた

横島自身は背負ってるつもりなど全くない

ただ残される者の気持ちを理解するが故に、出来ることはしておきたかったのだ

遠い未来でタマモやシロが、愛子達やルシオラ達や小竜姫達などと笑って過去を振り替えれるように……

せめてその助けのきっかけの一因にでもなればと横島は静かに考えていた



一方タマモは横島に言っても簡単に変わらないのを理解している

タマモ自身は本心から語ったことだが、横島もまた本心から心配してるのだ

大丈夫だと言われて変わるほど軽くないことも重々承知している


(横島、世界は貴方が思ってるよりずっと残酷なのよ。 私は貴方が世界の闇に堕ちるのが怖いわ)

決して口には出来ないがタマモは横島の目指す先が怖かった

そもそも今の横島の価値観は妖怪に近すぎるのだ

それは人間にとって非常に危険なことだとタマモは理解している

今ある平和で幸せな毎日が何かのきっかけで崩壊するのも、決してありえないことではないとよく理解していた


(横島はやがて世界が変わるのを求めるかもしれない。 でも世界は変わらないわ。 その時、横島はどうするのだろう……)

このまま行けば横島はやがて世界に目を向けるかもしれないとタマモは薄々感じている

それだけの可能性を秘めた人間である事はタマモもよく理解していた

しかし世界は決して変わらない

それはタマモの中に眠る前世が一番理解していたのだろう

次に挫折した時、横島はどうなるのか?

タマモは先の見えぬ未来に恐怖を感じていた


「私は幸せなのね。 未来が怖くなるほどに…… 大丈夫。 私は私のやり方で守ってみせるわ」

いつの間にか先の見えぬ未来に恐怖を抱くほど幸せな自分にタマモは不思議な気持ちだった

金毛白面九尾の長い人生でも、これほど穏やかで幸せに満ちた時代はなかったと本能的に感じている

そしてその幸せを守れと金毛白面九尾の本能が語りかけて来る気がしていた

元々シロが力を求めるのも、本能的に横島を失う恐怖があるのだろう

再び横島に危機が訪れた時の為にシロは力を求めて、タマモはその危機を回避する為に全力を尽くす

横島の気付かぬところで二人は確実に成長していた

それは横島や魔鈴の生き方を見てるからに他ならない

そんな横島達とタマモとシロの絆は、やがて新たな伝説の一ページになるかもしれないのだが……

それは数多の未来の可能性の一つである


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